医者は健康の専門家ではない。本当に健康な人の方がアテになる

それに、日本の医療は外国と比べてちょっと特別なところがあります。保険診療は、やっている国とやっていない国とがありますが、日本の保険診療の特色の一つは、保険がきくのは病名のついた病気だけということです。

たとえば、トシのせいで最近、歩くのが覚束おぼつかなくなってきたから、50代の体に戻してほしいと言われたとする。これは一般的に医師の専門外です。医療保険の点数がつかないからです。

もちろん、健康回復だとか若返りだとかの研究をしている医療機関もありますが、どうしてもそれは二の次、三の次です。やはり病名のついた病気を治す研究のほうが主体だし、優先されることになります。

つまり、医者は人を健康にする専門家ではない。健康になりたいというより、病気になりたくないということなら、まだなんとかなりそうですが、要するに医者は体の悪いところや病気を治す専門家なんです。

もう一つの重要なポイントは、循環器内科の医者なら「コレステロールを減らしたほうが心臓にいいよ」とか、消化器内科の医者だったら「これは消化に悪いから食べちゃいけません」とか言いますが、それはほとんどの医者がある特定の臓器の専門家だからです。

近所に「ナントカ内科クリニック」が開業して、訪問診療もやりますと看板を掲げると、一見、何でもできそうな印象を受けますが、そういうクリニックのお医者さんも、それまでは「カントカ大学病院」「カントカ国立病院」などの循環器科とか呼吸器科とかにいたという人が多い。

和田秀樹『和田秀樹の老い方上手』(ワック)
和田秀樹『和田秀樹の老い方上手』(ワック)

開業する前は大きな病院に勤めていたわけで、そういう病院は循環器・呼吸器・消化器というふうに臓器ごとに分かれていますから、彼らはある臓器の専門家であって、逆に言えば、それしか知りません。体全体の専門家ではないんです。

だから、健康全般の相談なんかしたってムダだということです。それよりは、素人でも自分で健康についてあれこれ調べている人とか、あるいは自分でいろいろ試してみて健康になったと言っている人のほうが当てになるかもしれません。

健康の専門家でもない医者を当てにするよりは、本当に健康な人に、その秘訣ひけつを聞いたほうがマシです。

先入観を捨ててマインドリセットすれば、医者に頼らなくても、あなたにあった健康法がきっと見つかるはずです。

本稿では薬の服用について考察しましたが、本書にはこのほか健康、医者や病院との付き合い、老いを楽しむなど、面白くてためになる全32編が掲載されています。是非ご一読ください。
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