かかりつけの病院を変えたり、セカンドオピニオンを受けたりするときに必要になる「紹介状」。ただ、医師に言いづらいという人も多い。内科医の名取宏さんは「ほとんどの医師は気にしないと思うので、遠慮なく伝えてほしい。それでも言いにくい人にはおすすめの方法がある」という――。
書類に記入する医師
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かかりつけ医がもっともよい理由

海外では受診できる医療機関が制限されている国も多々ありますが、日本の医療機関は原則としてフリーアクセスです。つまり、患者さんは自分のかかりたい医療機関を自由に選ぶことができます。そのため、定期的に通院しているかかりつけ医があるにもかかわらず、気軽に別の病院にかかる患者さんもいます。

もちろん、かかりつけ医が休診であるとか、何か診療に不満があるとかなら理解できますが、まるで「たまには違うスーパーで買い物してみるか」という感覚で、別の医療機関を受診する患者さんもいるのです。スーパーマーケットなら「こちらの店のほうが野菜が安くてよかった」なんてことがありますが、あちこちと病院を替えるのは患者さんにとってはあまりよくありません。

なぜなら、かかりつけ医は患者さんの病状や検査結果や治療の経過についてよく把握していますが、初診で診る医師は受診したときの病状しかわからないからです。もちろん、初診時も患者さんと話して情報を得る努力はするはずですが、他の患者さんがたくさん待っている忙しい外来では十分に時間をかけられませんし、患者さんの自己申告だけだと医学的に正確なのかどうかがわかりません。新規の医療機関で、かかりつけ医以上の適切な診療を受けられる可能性は高くないのです。

病院を変える場合は必ず紹介状を

そうはいっても「かかりつけ医と相性が悪い」「今の治療でいいのか不安を感じる」「全く症状がよくならない」などのさまざまな理由で、別の医師に診てもらいたいと思う場合もあるでしょう。

そういう場合は、多少の費用はかかりますが、かかりつけ医にいわゆる「紹介状」を書いてもらってください。紹介状は、正式には「診療情報提供書」といいます。その名の通り、診断名、病状の経過、検査結果、現在の処方、既往歴などの診療に関する情報が書かれたものです。この紹介状には、CD-ROMに入れた検査結果などの画像データを添付することもできます。以前、詳しい画像データはレントゲンフィルムで持ち運んでいましたが、現在ではデジタル化されて院内なら端末で閲覧できます。技術の進歩は素晴らしいですね。

こうして検査結果などを持っていくことができれば、次の医療機関で同じような検査をまた一から全部やり直す必要がありません。お金や時間の節約になるだけではなく、合併症のリスクがある検査を二度行うことも避けられます。さらに診療や治療をスムーズに開始できるでしょう。