心の病を招くストレスを溜めないためにはどうすればいいか。医師の和田秀樹さんは「ストレスの溜まる思考パターンから脱却するには、モノの見方を変えることが重要だ。二者択一的ではなく、グラデーションでモノを見る習慣をつけるといい。そうすれば他人に寛容にもなれ、自分にも寛容になれる」という――。
※本稿は、和田秀樹『和田秀樹の老い方上手』(ワック)の一部を再編集したものです。
心の病気の早期発見、早期治療につながるストレスチェック
ストレス社会と言われるようになってから、もうずいぶん経ちますが、2015年からは従業員50人以上の職場で「ストレスチェック」が義務化され、労働者のメンタルヘルスに対する社会的関心が高まっています。
「ストレスチェック」とは、会社外部の医師や保健師の指導によってストレスに関する質問票に答え、従業員一人ひとりの状態をチェックし、「高ストレス」と診断された人に精神科の受診を勧める制度です。
ストレスの度合いが高いと、心と体の健康に害と悪影響を及ぼし、将来、うつなどの心の病になる恐れがある。そうしたメンタルの不調を未然に防ごうという考え方です。
この考え方は正しいと私は思っています。多くの人は健康診断を受けて、たとえば血糖値が高いとか、大腸にポリープがあるとか言われると、あわてて医者に行きますよね。
ところが、一般的に体の健康診断には関心が高く、検査結果に一喜一憂するのに、ストレスチェックで高ストレスと診断されても、まあこれくらい大丈夫だろうとたかをくくって、医者にかかろうとしない。心の健康には無頓着な人が多いのです。
厚労省や我々精神科医の考え方としては、ストレスチェックをするのは、症状が悪化する前に早めに医者にかかってもらおうということです。体の病気と同じく、早期発見、早期治療が大事なわけです。