夜の銀座流マナー「3つの『ない』」

評判のよいホステスの特徴は、何を置いても言葉遣いと所作が丁寧なことです。

丁寧な言葉遣いには品格が感じられますし、ゆっくりと落ち着いた所作は優雅に見えるものです。

「銀座は男性のステイタス」と言われるだけあって、お客様も丁寧で行き届いた接客のもと、ゆったりした気分で会話を楽しみながらお酒を飲みたいのです。

丁寧な言葉遣いは、接客の基本です。

「はじめまして。○○子と申します」「何をお飲みになりますか?」

常連さんには「またお目にかかれて、うれしいです」「いつもありがとうございます」と、おもてなしの言葉をかけます。

相手に粗雑な印象を与えないように、特に語尾には気をつけて、微笑みながらゆっくりと話すため、品格が感じられるのです。

言葉遣いが丁寧な人は、それだけで何倍も素敵に見えるものです。

私が学んだホステスの心構えに、「お客様を立てるために、自分を立てない」がありました。さて、自分の何を立てないと思いますか?

正解は、「腹を」立てない、「音を」立てない、「聞き耳を」立てないです。

静かに腰を上げ、戻ってきたら静かに座る

最初に、腹を立てないから説明しましょう。

お客様の中にはまれにですが、平気で嫌なことを言ってくる人がいます。

そんなときでも、腹を立てず笑顔でその場を乗り切るのです。

もちろん、あまりにもひどい、程度を越えた暴言の場合はママの出番となりますが、すぐにカッとなって感情的に言い返さないようにしましょう、ということです。

次は、音を立てないです。

水割りなどのお酒をつくるとき、できるだけ音を立てないように気を配り、お客様の手元にもそっと置きます。

カフェでお茶やランチをするとき、お店の人にお水の入ったグラスをコンッと音を立てて置かれると、少し乱暴な印象を受けないでしょうか。コースターぎりぎりに静かに置けば、そんな音を立てずに置くことができます。

テーブルの上にレモンと冷たい水のガラスを置くレストランのサーバー
写真=iStock.com/JulieAlexK
※写真はイメージです

銀座のお客様は、ホステスや黒服の所作をよく見ています。それだけに、音を立てないように動くことは大切なマナーだったのです。

席を立つときは「ちょっと失礼いたします」と言って静かに腰を上げ、戻ってきたら静かに座ります。

歩くときも、ヒールの音をカンカンさせないように、またはドタドタしないでゆっくりと歩きます。

御手洗いやロッカーのドアを閉めるときも、静かに閉めます。「バン!」と大きな音を立てないように、いつも意識していました。