「ネットのニュースはタダが当たり前」になった
「ヤフー」など主要ポータルサイトで読まれるニュース記事の対価は、1回の閲読あたり平均で0.124円――。
公正取引委員会が9月下旬、ニュースポータルサイトを運営するヤフーやグーグルのIT大手(プラットフォーム事業者)と、記事を提供する新聞社などの報道機関との取引実態について調査した報告書をまとめ、初めてネットにおけるニュース記事市場の概要が明らかになったが、記事のあまりの安さに報道関係者を中心にショックが広がっている。
「ネットのニュースはタダが当たり前」という風潮が広がる中、多くの記者が周到に取材して書いた記事がIT大手に“激安”で買いたたかれている実情は、世界の報道機関にとって共通の悩みだ。
ネット上でフェイクニュースやヘイト情報が蔓延し社会生活に大きな影響が出ているだけに、民主主義の根幹となる「正確で公正なニュース」の重要性は増すばかり。このため、欧米各国では近年、報道機関を後押しするため、IT大手に対する規制を強めている。
公取委は、ニュース記事が適正な価格で取引されるよう、双方の直接協議を促したうえで、IT大手に対し記事の使用料が著しく低い場合は「独占禁止法上問題になる」と警告した。日本もようやく、信頼できる報道機関のニュースの確保に向けて一歩を踏み出したといえる。
だが、コップの中の争いに汲々としてなかなか結束できない新聞社などの報道機関が、百戦錬磨の強大なIT大手と正面から渡り合って正当な対価を得られるかどうかは不透明だ。
新聞・雑誌・テレビの伝統的メディアの退潮に歯止めがかかるかどうか、この数年が正念場となりそうだ。
ついに公正取引委員会がIT大手にメスを入れた
「ニュースコンテンツ配信分野に関する実態調査報告書」と題した報告書は、164ページにも及ぶ大部で、IT大手と報道機関のニュース記事の取引について詳細な価格まで公表した本格的な内容だ。これまで当事者の利害関係が入り乱れて実態は霧の中だっただけに、公的機関が明らかにした意義は大きい。
報告書は、冒頭で「ニュースが国民に適切に提供されることは、民主主義の発展にとって不可欠」と強調。報道機関とIT大手の取引が適切に行われないと、国民が良質で正確・公正なニュースを享受することが難しくなると憂慮した。