背景にあるのは、この10年余の間に、ニュース(テキスト系)を入手するメディアが、伝統的メディアからネットメディアに劇的に変わってしまったことだ。

総務省の「令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、「もっとも利用しているニュースメディア」は、2013年度から22年度の10年間に、新聞は59.3%から18.0%と3分の1以下に激減した。

発行部数はピーク時から半減したが…

一方、ネットは、ヤフーやグーグルのポータルサイトが20.1%から47.0%と2倍以上に大幅増。サービスを開始してまもなかったLINEニュースなどソーシャルメディアは18.7%に急増した。スマートニュースなどのキュレーションサービスも6.5%程度のシェアを占めている。ちなみに、新聞社のニュースサイトは3.0%(無料2.1%、有料0.9%)と存在感を示せずにいる。

また、公取委の調査では、「ニュースを探す場合にもっとも利用するサービス」は、検索サイトで54.4%、グーグル28.4%とヤフー26.1%が双璧だ。次に、ポータルサイトで34.8%、この中ではヤフーが18.3%と群を抜いており、スマートニュース6.7%、LINE3.7%と続く。新聞社などのニュースメディアサイトはわずか2.0%で、ここでも肩身が狭い。

ニュースへのアクセスは、伝統的メディアとネットメディアで完全に逆転してしまったのである。

伝統的メディアの凋落ぶりは、眼を覆いたくなる。新聞の総発行部数は、23年上期に2679万部(ABC協会調べ)にまで落ち込み、1997年のピーク時に比べほぼ半減してしまった。総売上高(日本新聞協会加盟86社)も22年度には1兆3271億円にまで縮小、ピークの2兆4188億円(05年度、96社)からほぼ半減した。雑誌も、22年の総発行部数は約13億冊(出版科学研究所調べ)にとどまり、10年間で5割以上も減った。

これに対し、ネットは、ニュースのページビュー(閲読数、PV)が21年度で約2365億件と、19年度に比べ2年間で25%も伸びている。

こうしてみると、名実ともに「ニュースはネットで」が加速していることがわかる。

積み上げられた新聞
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ネットで読まれても儲からない…新聞とあまりに違う記事の対価

公取委の調査によると、IT大手が報道機関と結んでいるニュース記事の使用契約件数は、16年度1465件から21年度2944件と5年間で倍増した。言い換えれば、報道機関はIT大手への依存度を急速に高めているといえる。

ところが、今回の調査で、ニュースポータルサイトに掲載される記事の使用料がきわめて安価に設定されている実態が浮き彫りになった。

調査対象となったニュースポータルサイト事業者6社(ヤフー、マイクロソフト、LINE、スマートニュース、Gunosy、NTTドコモ、)が21年度に報道各社に支払った記事使用料は、平均で1000PV(閲覧数)あたり124円(最大251円、最少49円)。つまり、1記事当たりの対価は0.124円だった。