欧米各国で進むIT大手への法的規制

海外では、報道機関が良質なニュースを提供し続ける環境をつくるため、政府が介入してIT大手を規制する動きが広がっている。

オーストラリアでは21年2月、世界で初めて、グーグルやメタのIT大手が報道機関のニュース記事を配信した場合に対価の支払いを義務づける「ニュースメディア取引法」を制定した。

カナダでも6月、同じ趣旨の「オンラインニュース法」が成立。12月に施行されると、グーグルとメタは報道機関に毎年2億3400万カナダドル(約260億円)を支払わなければならなくなる可能性があるという。

同様の規制の動きは、イギリスやニュージーランド、マレーシアでも始まっている。

欧州連合(EU)では19年4月、報道機関がIT大手にニュース使用の対価を請求できる権利を認めた「デジタル単一市場における著作権指令」を発出。この新著作権指令を受けて、フランスは早々に国内法を整備した。

EUの旗
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一方、巨大IT企業を抱える米国でも、規制の動きが広がっている。報道機関が記事使用料などをめぐってIT大手との団体交渉を認める「ジャーナリズム競争・保護法案」が連邦上院司法委員会を通過。カリフォルニア州でも、州下院が「カリフォルニア・ジャーナリズム保護法」を可決している。

こうした行政が報道機関を後押しする世界的な流れの中で、報道機関の奮起を促す提言のレベルにとどまった公取委の姿勢は、いささか生ぬるく映る。とはいえ、初めてIT大手にメスを入れようとした姿勢は評価できよう。

「儲からないネット記事」を漫然とつづける報道各社の過ち

ボールは、報道機関側に投げられた。

さっそく、日本新聞協会は「ネット上の健全な言論空間を守るため、プラットフォーム事業者は報道機関と真摯しんしに協議するよう求める」とする見解を公表した。

だが、長年、互いにライバル視してきた報道各社が、結束してIT大手と対峙たいじできるかどうかというと、懐疑的にならざるを得ない。今や「敵」は、新聞業界内ではなく、規模も体力もはるかに大きなIT大手なのに、新聞各社の経営陣は、いまだに業界内の争いにうつつを抜かしているのだ。

なにしろ、最大手の読売新聞は、発行部数が「朝日新聞+毎日新聞」や「朝日新聞+日経新聞」より多くなったことが自慢で、最近は「読売こそが唯一の全国紙」と言ってはばからない。

新聞の購読者が次々に無読者に切り替わり、今や自らの購読者のつなぎ止めに躍起になっている状況なのに、購読料の安さをウリにライバル紙との競争に明け暮れているのだ。