百貨店の閉店や身売りが郊外だけでなく都心にも広がりつつある。ライターの南充浩さんは「百貨店の特徴は『平場』と呼ばれる自主運営の売り場だが、その多くは競争力を失っている。高コストの百貨店が低コストのファッションビルに置き換わる流れは止まらないだろう」という――。
西武池袋本店
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西武池袋本店の売却は当然の結果

8月31日に大手百貨店のそごう・西武の西武池袋本店(東京都豊島区)がストライキを行いました。大手百貨店のストライキは実に61年ぶりです。かねて報道されているそごう・西武百貨店の売却問題が原因で、労働組合側は百貨店事業の継続と従業員の雇用確保を訴えていました。雇用確保については明言されたものの、そごう・西武は米投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」へ売却されました。

私は「ストライキが行われても親会社のセブン&アイ・ホールディングス(HD)は売却を実行する」とブログに書いていましたが、その通りの結果になりました。セブン&アイからすると大手百貨店グループの中でも元から収益性の高くないそごう・西武百貨店を切り離したくてたまらなかったのですから、ストライキくらいで売却を撤回するはずがありません。

西武池袋は国内3位の売り上げも、百貨店事業が赤字

百貨店や流通業界の知識がある方には有名なことですが、西武池袋本店とそごう横浜店は単独店舗としては国内でもトップクラスの売上高を誇るものの、そごう・西武百貨店全体の決算は厳しく、コロナ禍以前から営業利益は減少しており、コロナ禍以降は営業赤字に転落していました。セブン&アイとしては、西武池袋とそごう横浜が好調で資産価値があるうちにできるだけ早期に売却してしまいたかったのです。

ちなみに、2022年度の百貨店店舗別売上高ランキングでは、西武池袋は3位で1768億円、そごう横浜は12位で1063億円という好成績です。13位からは売上高1000億円未満となるので、この2店舗がいかに有力なのかがわかるでしょう。