インバウンド需要がピークでも利益は雀の涙だった
この有力店2店舗を擁していながら、近年のそごう・西武の決算は厳しい状況が続いていました。15年度(15年3月1日~16年2月28日)からは営業利益が100億円を割り込み、74億1100万円へと低下してしまいます。それ以降、16年度は43億円、17年度は50億円、18年度は32億円、19年度はわずか1億7200万円――と、転がり落ちるように営業利益を減らし続けてきました。
特にコロナ禍がまだ始まっておらずインバウンド需要がピークに近づいていた18年度の営業利益が32億円、コロナ禍の影響がまだ出ていない19年度の営業利益がわずか1億7200万円へと激減しているところに驚かざるを得ません。そしてコロナ禍が本格化した20年度からは営業赤字に転落しています。
経常利益も同様に15年度以降は減少の一途をたどり、18年度には早くも17億5100万円まで減少、19年度は8億5800万円の赤字へと転落しています。さらにいえば当期純利益は2012年度、15~17年度、19年度が赤字に陥っているという始末です。
おまけにセブン&アイが貸付金を放棄した後でも、そごう・西武の有利子負債額は2000億円も残ると報道されていますから、セブン&アイからすればこんな不採算業態はさっさと「損切り」するのが当然の施策になります。
「西武池袋が好調なうちに高値で売却したい」
そごうは2000年に経営破綻、西武百貨店は2003年に経営不振に陥りました。その後セブン&アイHDが両社の持ち株会社を買収し子会社化したのですが、当時ですら、なぜセブン&アイがそごう・西武を買収したのか合理的な理由は全く不明でした。千慮の一失というものだったとしか言いようがありません。
経営が傾く前には店舗数の多かったそごうと西武ですが、現在のそごう・西武の店舗数はわずかに10しかありません。そのうち、西武が6(うち2店舗はショッピングセンター形式)、そごうは4店舗を残すのみです。もう店舗網のスケールメリットを生かすことによっての経営改善は不可能な縮小ぶりですから、好調店舗が健在なうちに売り払いたいとセブン&アイが考えるのは極めて当然といえるでしょう。