国内ではタブー視されがちな女性器周辺のケアやトレーニングの重要性にいち早く着目し、膣ケアや膣トレ関連のビジネスを展開してきた山口明美さん(48)。当初は敬遠されることも多かったが、最近は軌道に乗り始めた。どのように事業を切り開いてきたのか。フリーライターの東野りかさんが取材した――。
山口明美さん
写真提供=山口明美
山口 明美さん 3FACE 代表取締役・膣ケア/膣トレ講師・膣姐(ちつねぇ)

深刻な会陰裂傷、尿もれで産後うつに

「海外では顔と一緒で膣のお手入れもするし、子供の頃から膣ケアの方法を教わっています。タブー視する日本と全然違うんです」

そう語るのは、3FACE(本社:大阪市)の代表取締役・山口明美さん(48)だ。日本初の「膣プランナー」として活動し、ちつねえさん、略して「ちつねえ」というニックネームで呼ばれることもある。

山口さんは19歳からエステティシャンとしてキャリアをスタート。美容サロンや美容メーカーのセールスなど約30年もの間、美容業界に携わったあと、現職に至る。

日本国内ではいち早く女性器である腟のケアや、膣を鍛えるトレーニングに着目。4年前に会社を立ち上げ、膣の健康と全身の美容をつなげる活動を開始した。

そもそも、なぜ膣に着目したのか。

聞けば、20年ほど前、次女の出産時に深刻な会陰えいん裂傷を起こしたのがきっかけ。新生児が母親の胎内から産道を通って生まれてくる際、膣と肛門の間の会陰がランダムに裂けてしまったのだ。実際には、これを防ぐために産科医があらかじめ産婦の会陰にメスで切れ込みを入れる会陰切開が行うことが多いが……。

「次女は約4000gのビッグベビーで、しかも彼女の肩が膣の入り口に引っかかり、会陰がひどく裂けてしまって。その結果、14針も縫うことになりました……。出産後も大変で、とてもひどい尿もれに悩まされ続け、産後うつにもなったのです」

出産は女性の体に大きな負荷がかかる。子宮、膣、尿道などの臓器を支える骨盤底筋に強烈な圧力をかけて赤ちゃんが母の体内から出てくるため、産後に山口さんと同じような症状で苦しむ女性も少なくない。