<予想を大きく上回った2023年4-6月期のGDP成長率だが、個人消費も設備投資も厳しい状況。数字を押し上げた要因とは?:加谷珪一>
都市部の空撮
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2023年4~6月期のGDP成長率はプラス1.5%、年率換算でプラス6%と予想を大きく上回った。コロナの収束で、いよいよ日本経済も成長が期待されると言いたいところだが、あまり喜べる状況ではない。今回、結果が良かったのは、GDPの計算手法に起因する、ある種の「数字のマジック」であり、内容はかなり厳しいものだった。

厳密な意味でGDPを計算するためには、日本における全ての商取引を全て足し上げる必要があるが、これは現実的な話ではない。各四半期のGDPは、企業の生産統計や家計調査を基に、消費や設備投資、輸出入などGDPにおける大まかな支出項目の増減を足し合わせることで算出している。

GDPの定義上、輸入が減ると数字が上昇するので、前期と比較して輸入が減少すれば、その分だけGDPが増える。輸入が減るのは、景気が悪いタイミングであることが多く、輸入が減ってGDPが増えるというのは直感的にピンとこないかもしれないが、計算上はそうなると理解してほしい。

4~6月期については、個人消費がマイナス0.5%となっており、前期よりも状況が悪くなった。個人消費と並んで成長のエンジンである企業の設備投資は0%と成長に寄与せず、プラス成長となった要因のほとんどは輸入の減少による数字のかさ上げだった。支出面の最大項目である消費が大幅に落ち込んでいたことを考えると、実体経済は厳しい状況にあると理解してよいだろう。

国内ではあらゆるモノの値段が上がっている

日本の輸入が大幅に減った理由は明らかで、円安による輸入品の大幅な価格上昇である。政府の補助によって何とか激しい高騰は抑制されているものの、ガソリン代や電気代などエネルギー価格の上昇が顕著となっているほか、パソコンやスマホなど輸入品は軒並み値上げされた。

食品の原材料の多くは輸入であり、製造過程や物流においてもエネルギーを消費するので、国内ではあらゆるモノの値段が上がっている。

つまり、あまりにも輸入品の価格が高いことから、購入を諦めるケースが増え、これが輸入を減らしたと考えられる。こうした環境下でも、業績が好調な一部の業界は原材料や部品を調達するため積極的に輸入を行っているが、これは全体からすると少数派でしかない。