日本を本当の「優しい国」にするために

変えるということに、反対はつきものでしょう。ただし、規制をそのまま維持するのが「優しい」ことに必ずなるとは、私は考えていません。新しい状況に対して困っている人がいるのなら、それを解決するのが本当の優しさだと思うからです。

規制を緩和することによって、一部の人が既得権から外れ、冷たくされたと恨みを抱くかもしれませんけれども、新しい状況に対して困っている多くの人を救うのなら、それが「優しい」と思います。

国内で約25万人といわれるタクシー運転手がさらに減っている。その何十倍、何百倍もの「移動難民」と呼ばれる人たちが救われ、助かるために、最大多数の最大幸福という観点で、どのようにするのがいいのか。議論の余地は、そう多くはないことでしょう。

日本のパスポート取得率は人口の2割を切っていますから、海外旅行の経験のない人がとても多い。インバウンドの盛んないまの日本では、海外の観光客が炎天下でタクシーが拾えずに汗だくで路上に立ち尽くしている光景が珍しくなくて、多くの日本人は海外旅行というのはそれが当たり前のものと思う人が少なくなくなっています。

川邊健太郎氏
撮影=遠藤素子
新しい状況に困っている人たちがいる。規制を見直し、課題を解決していくことが本当の優しさだ。

しかし、世界ではシェアリング・エコノミーというイノベーションが起きて、タクシーなどに乗りたいときに乗れないということはなくなっている国が多くあります。規制を取っ払うと同時にイノベーションを起こして、困っている多くの人たちに優しくすべきなのではないでしょうか。

2023年10月に、ヤフーとLINEが一つの会社に統合して、「LINEヤフー」として新たなスタートを切ります。みなさんにとって、より便利なものをスピード感をもって、もっともっと出していきます。

(聞き手・構成=ノンフィクション作家・樽谷哲也)
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