コロナ禍を経て、一時は激減していた訪日外国人客が戻ってきている。観光戦略アドバイザーの村山慶輔さんは「残念ながらインバウンドの受け入れ体制は不十分な部分が多い。このままでは、観光業が国の基幹産業になるのは難しい。日本はたくさんの魅力に溢れているのに、もったいない状況だ」という――。
成田空港
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コロナ以前と何も変わっていない日本の観光業

2023年5月に公表された日本政府観光局の「訪日外客統計」によれば、アメリカ、シンガポール、ベトナム、中東など、すでにコロナ禍前の訪日数を上回っている国・エリアがある。

「インバウンド完全復活!」「観光業のV字回復!」といきたいところだが、残念ながらそうは問屋が卸さないかもしれない。

コロナ禍の2020年11月に私が書いた『観光再生』でも触れた通り、日本は“新しい観光”に生まれ変わるべきであったが、なかなかそうはならなかったからだ。良くも悪くも、ほとんど現状維持のまま、時間だけが過ぎた。問題の根本の1つは、アップデートが観光の現場で起きていないことにある。

そこで現場で起きている改善すべき課題を紹介したうえで、“真の観光再生”に向けた私なりの提言をお伝えしたい。

旅行の満足度を決めるのは空港

私はこれまでインバウンド戦略アドバイザーとして海外を含めた全国津々浦々をまわってきた。その中で感じているのは、その土地の第一印象は玄関口である空港が大きく左右すること。

一般に“プライマシー効果”とも呼ばれるが、最初に与えられた影響は、その後の印象にも影響を与えていくことが知られている。飛行機を利用して日本という土地に降り立った外国人に関していえば、空港から初日の宿泊施設到着までの体験が、訪日旅行全体の満足度に影響を及ぼすといっても過言ではない。

ドーハのハマド国際空港やシンガポールのチャンギ国際空港のように、空港を豪華絢爛けんらんにすべきだと言いたいわけではない。すべからく旅行者は、これから訪れようとしている土地に対して「期待値」というものを持っている。空港ではその期待値を裏切らないようにしなければならない。