「アフターコロナの観光」を占う3つの書籍が相次いで出版された。著者の1人であるやまとごころ代表取締役の村山慶輔氏は「観光にエネルギーを与えるのは歴史的建造物ではなく、コンテンツを創造する人だ。多様性を重視し、クリエイティブな人材を集めなければ観光業界は壊滅してしまう」という。京都府立大学教授の宗田好史氏、社会学者の中井治郎氏との鼎談をお届けしよう——。(第3回/全3回)

※当鼎談は「FabCafe Kyoto」の協力のもと、感染症対策を配慮して行いました。

快適な家で旅行体験ができるバーチャル観光

【村山慶輔(やまとごころ代表取締役)】いま、日本の観光は非常に苦しい状況に置かれています。2019年には3000万人を超えたインバウンド(訪日外国人観光客)がほぼゼロになり、国内旅行者も観光することに慎重な人が少なくありません。

(左)『インバウンド再生』(学芸出版社)宗田氏、(中央)『観光再生』(プレジデント社)村山氏、(右)『観光は滅びない』(星海社新書)中井氏
写真=遠藤由次郎
(左)『インバウンド再生』(学芸出版社)宗田氏、(中央)『観光再生』(プレジデント社)村山氏、(右)『観光は滅びない』(星海社新書)中井氏

一方、新型コロナウイルス感染症が生活様式を半強制的に変えたことで、あたらしい観光のあり方や取り組みが出てきています。拙著『観光再生』でも触れましたが、象徴的なのがバーチャル(オンライン)ツーリズムです。

【宗田好史(京都府立大学教授)】オンラインツーリズムのことを考えると、実は京都の観光は危うい側面を持っているといえます。今から約20数年前、インターネットというものが普及しだしたときですが、フランスのある地理学者が「航空会社と旅行代理店は壊滅する」という論文を書いたんです。

歴史的にみて、旅というのは苦しいものです。その苦しさを軽減するために、交通機関が発達し、快適なホテルが発展してきたわけですが、それでもやはりリアルに旅をしようとすると、苦しいんですね。

だから、バーチャルで、つまり快適な家から一歩も外に出ることなく旅行体験ができるなら、そっちのほうがいいよねって。

【村山】今回のコロナ禍によって、それが急速に進んできているということですね。

【宗田】そう。そこで、バーチャルで体験できることと、リアルが強いコンテンツを考えていくと、京都みたいな文化性に特徴を持つ観光地は危うくなるわけです。スキーや登山とかは、やっぱりまだまだバーチャルでは弱いですから。