閉店中の店ばかりだった成田空港

5月から6月にかけて、私は海外出張のため成田空港を数回利用した。成田空港を利用するのは久々で、コロナ禍の真っ只中には閑古鳥が鳴いていたと聞いていたので、訪日旅行者の賑わいはどんな様子だろうかと胸を高鳴らせながら日本の玄関口となる国際空港に足を踏み入れた。

しかし、訪日旅行者に対して期待値通り、あるいはそれを上回るような体験を提供できているだろうかと疑問に感じざるを得なかった。

「モノ消費よりもコト消費」ということが言われて久しいが、実情として〈モノ消費=ショッピング〉は訪日旅行者にとって人気のある消費行動である。その期待値は高い。しかし、成田空港のショッピング事情はコロナ禍後の需要復活に出遅れている。

人材不足に喘いでいるのは重々承知している。航空需要もまだ完全に回復したわけでもない。その状況下で店舗運営のために雇用を新規に確保するのは厳しいのかもしれないが、国際空港であり、日本の入り口である成田空港が画像1のような現状では寂しすぎる。

営業時間内なのにシャッターを下ろしている店
筆者撮影
営業時間内なのにシャッターを下ろしている店

これらはいわゆる出入国前の一般エリアの店舗であるが、保安検査場などを通過した先の搭乗エリアの免税店についても同様の状況であった。

電光掲示板のフライト情報も確認したが、台湾、オーストラリア、ハワイ、フィリピン、ドバイ、ドーハなどへの便も残っていた(5月末の18時頃)。

努力不足は否めない

厳しい言い方かもしれないが、人材不足でお店がオープンできないのであれば、その店舗の努力が足りていない面もある。時給1200円で人が集まらないのであれば、時給1500円や1800円などにして人を集め、その分、収益が高まるような商品ラインナップの差別化や陳列の工夫、オペレーションにおける省人化などを図るべきであっただろう。

象徴的だったのは、中部国際空港セントレアにあった「ぐい呑み」の商品だ。国際線の搭乗エリアにある免税店にもかかわらず、日本語での説明しかなかった。

売る気があるのかわからない「ぐい呑み」
筆者撮影
売る気があるのかわからない「ぐい呑み」

「5300円(ぐい呑 金箔きんぱく)」と書かれた商品を本気で売るならば、多言語表記にとどまらず、手にとって肌触りから使い心地までを体験してもらう必要があるが、ビニールでしっかりと梱包こんぽうされてしまっている。これでは売る気がないと思われても仕方がない。

これはあくまでほんの一例である。同様の状況が日本のさまざまなところで見受けられている。