ムードや気分でセックスをする時代ではなくなった

また元来、ダイバーシティやSDGs志向が強いZ世代を中心に、ジェンダーギャップへの違和感やLGBTへの理解が進み、同性婚や事実婚(同棲婚)、選択的夫婦別姓、妻が年上の「年の差婚」なども、じわじわと広がりを見せています。今後、卵子凍結がさらに一般的になれば、結婚しないまま子を産むシングル女性も、少ないながら増えていくでしょう。

牛窪恵『恋愛結婚の終焉』(光文社新書)
牛窪恵『恋愛結婚の終焉』(光文社新書)

これらの多くは、恋愛の延長線上にある結婚、すなわち「恋愛で女性をリードした男性が、家庭でも女性をリードする」といった図式とは一致しません。

また、いまや不妊治療を含む子作りや家事・育児シェアなど、夫婦が「妊活(排卵日)アプリ」や「家事分担アプリ」を駆使し、ワンチームとしてスケジュール通りに行動する時代です。夫婦が恋愛気分で、「なんとなくいいムードだから、今晩エッチ(性行為)しようか」と目と目を合わせたり、夫が妻の機嫌を取ろうとして「トイレ掃除でも手伝っておくか」と重い腰を上げたりと、空気や気分次第で行動するようでは、子作りや家庭内タスクは、とても遂行できないのです。

ベッドに男女の足
写真=iStock.com/Prostock-Studio
※写真はイメージです

ムードに代わって重視されるのは「誠意と計画性」

ムードや空気、気分に代わって重視されるのは、互いの「誠意と計画性」でしょう。

事前に各々の担当範囲やスケジュールを共有し、目標を決め、裏切ったり失念したりすることなく、力を合わせてそのタスクをこなしていく、そうした誠意と計画性、そして「共創」の概念こそが、令和の結婚生活に求められることなのです。

そうである以上、「恋愛」と結婚・出産を無理に三位一体化させるより、令和のニーズに合わせて、最初から恋愛と結婚を切り離して考えるほうが、どう見ても自然ではないでしょうか。

おそらく、このようなな結婚の形を、「結婚ではない」とみる人もいるでしょう。

ですが、「ビール(アルコール)市場」を考えてみてください。この20年(’97年→’17年)の間に、飲酒習慣率、すなわち週3日以上、1日1合以上飲酒する人の割合は、20代男性で約半分に、同女性では3分の1にも減りました(厚生労働省「国民健康・栄養調査」)。またZ世代では、アメリカ由来の「ソバーキュリアス(あえて飲まない)」を志向する若者も増えています。それなのに、ビール類カテゴリー全体の市場規模は、20年間(’00年→’20年)の間に、当初懸念されたほどは落ち込まなかったのです(’21年 キリンビール調べ)。

なぜか、既にお気づきの人もいるでしょう。そう、若者がけん引したとされる「ノンアルコールビール」市場が、’09年の登場以来、4倍にも増えたからです。

逆に、もし「昭和のビール以外は、ビールと認めない」と、頑なに「ノンアル」を跳ねつけていれば、今日の市場規模は間違いなく保てなかったでしょう。

結婚も同じです。若者の8割以上が望む結婚を劣化させず、未婚化や少子化に向けて真剣に対策を講じたいと願うなら、大人たちも昭和の常識、すなわち「ロマンティック・ラブ」への頑ななこだわりを捨て、若者たちのニーズに真摯しんしに向き合うべきではないでしょうか。

もはや昭和ではない、時代は令和です。「恋愛結婚が当たり前」から「共創結婚も、いいよね」へ、変わるべきは、私たち大人のほうなのです。

★提言4:時代は令和。昭和の社会通念を見直し、若者たちのニーズに寄り添おう
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