女性活躍の障壁となる「保育の壁」「職場の壁」「家庭の壁」。甲南大学教授の前田正子さんは「2017年に行った保育園入園時のアンケートによると、家庭では他ならない夫(子どもの父親)が妻のストレス源になっている。父親がもっと長い時間、育児を担えるよう、意識改革と男性の長時間労働改善が必要だ」という――。

※本稿は、前田正子、安藤道人『母の壁 子育てを追いつめる重荷の正体』(岩波書店)の一部を再編集したものです。

仕事と家事育児を一手に担い、疲れ果てた母親たち

日本の母親が父親(夫)に対してどう感じているのか、調査の自由記述を見てみよう。「男は仕事、女は家庭」という性別分業の価値観が強い中で、とにかく母親は仕事と家事育児を一人で背負うことに疲れ切っている。少しでも父親が家事や子育てを我が事として捉え、主体的にやってくれればと願うばかりだが、その思いは父親には届いていないようである。

【回答A】昨年までは働いていなかったのであまり感じなかったのですが、働きだして思うのは、“自分の食べた食器は自分で下げる”など、子どもの見本になるようなことは父親に積極的にしてほしいです。

【回答B】家でも家事や育児の分担は圧倒的に女性の方が多く、家に帰ってから寝るまでヘトヘトになってしまいます。

【回答C】男性の育児参加が増え、制度も充実してきています。育児を手伝うのではなく、育児のできる男性が増えてほしいです。

【回答D】家庭内では夫にも育児に参加してもらえるように役割を分担していますが、いつの間にか自分自身がやってしまうことが多く、結局、妻の家事負担は減りません。
家事をしている妻とゲームをしているアジアの夫
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです

まだまだ父親には育児への責任感や当事者意識がない

母親が強い不満を抱いているのは、父親の責任感や当事者意識のなさである。夫婦二人の家庭であり、子どもを育てているのだから、本来は二人で担うべきもののはずなのに、子どもが病気の時に休むのも母親、家事育児のために働き方を変えるのも母親。父親は「手伝う」だけで十分という考えで、一緒に家事育児を担わなくてはならないという自覚がなく、仕事も職場の付き合いも変えようとしない。

【回答E】共働きである場合、夫婦の立場はほぼ同等であると思うので、家事育児の分担は半々ぐらいが理想的。働いて、家事をして、育児をして疲れはてて、二人目の子どもなど、作る余裕も持てないので。

【回答F】イクメンブームで、育児参加してるパパが増えてるようですが、うちは何で違うんだろうなーと思います。仕事が忙しすぎて子育て現場にいることが少ないので、たまに手出ししてきては、文句を言い……、何かちぐはぐだなあと思います。男性も「イクメン」なんか言われる社会じゃなく、あたりまえに時短勤務できたり子育て休暇がとれる社会になったら、もう少し意識もかわるのでしょうか……。(略)

【回答G】家事を分担していても、うっかり忘れたりなどの場合、父親はしないままで済んで、しわよせが母親側に全てくるのが不公平。誰かがやらなければいけないことは結局母親がやるハメになるので、父親にもっと家事でも責任感をもってほしい。

【回答H】男女平等と言いながら、女性は外でフルタイムで働いても家でも家事をする。男性は家事は手伝い感覚で、外で働くことが大事みたいな風潮はまだ強く残っていて、それがとてもストレスです。

【回答I】家事が辛い時の代わりがいない。(略)協力程度も家事ができない夫の意識は変えなければいけない。