老後の資金準備の最大の注意点は「準備のリミット」がリタイア時ということだ。リタイアしてから慌てても時すでに遅しだ。ファイナンシャルプランナーの山崎俊輔さんは「自分が何歳まで働くか、退職金はいくらかを事前に認識し、リタイアまでに新NISAやiDeCoを有効活用して老後資金を準備するといい」という――。

※本稿は、山崎俊輔『新NISAとiDeCoでお金を増やす方法』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

シニア女性ががま口財布を手にしている
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「老後に2000万円」を現役時代に完遂させる

誰もが逃れられない人生の最後に、もっとも大きな資金準備が待ち構えています。いわゆる「老後に2000万円」問題です。

2000万円という数字の根拠は、実はあいまいなものです。当時は月5万〜6万円の不足が2000万円になると言われていましたが、2021年の家計調査年報を見ると、年金生活夫婦の不足額は月1.85万円となっており、30年で積算すると「老後に666万円」に縮小してしまっています。もちろんコロナ禍での外出自粛の影響がありますが、生活次第でずいぶん変わるのです。

また、公的年金の破たん問題と関連付けて批判する人が多かったのも残念でした。公的年金は水準の低下はあっても「終身年金」で生きている限り、何十年でも支給する仕組みは維持されます。また、日常生活費をやりくりするギリギリのところに水準設定がされており、むしろ一生もらえる安定収入と位置づけられます。

誤解の多かった「老後に2000万円」問題でしたが、「老後に向けて公的年金以外にも計画的な資産形成を行う必要がある」という理解を国民に深めたことだけは有意義でした。

老後の資金準備の最大の注意点は「リタイアまでが準備のリミット」であるということです。65歳で気がついて、退職金で慌てて高リスク運用することはおすすめできませんし、65歳時点の公的年金収入を投資に回し、75歳時点に回すようなこともできません。働いていないので、65歳でもらう公的年金は65歳の生活費に回すほかないからです。

となると、老後の資産形成は「リタイアまでに完成させる」ことが求められる難易度の高いマネープランとなります。住宅購入や子どもの学費のやりくりと同時並行的に進めていかなければならないからです。