老後資金を確保するにはどうすればいいのか。ファイナンシャルプランナーの横山光昭さんは「2000万円を30年かけて貯金するには月額5万6000円が必要だが、つみたて投資だと半額以下で済む。貯金との差は明らかだ」という――。

※本稿は、横山光昭『定年後でも間に合うつみたて投資』(角川新書)の一部を再編集したものです。

複数の一万円札を片手に、電卓を使用する男性の手元
写真=iStock.com/Panuwat Dangsungnoen
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定年後のお金はいくら必要か

つみたて投資に取り組む前に、自分自身の定年後のお金は、具体的にいくらくらい必要になるかをデータを使いながら考えておきましょう。

まずは収入面から確認します。

主な収入源となるのは公的年金です。厚生年金の標準的な年金額は、2022年で約21万9000円です。これは会社員として平均年収530万円くらいで40年間勤務した夫と、専業主婦の妻というモデル夫婦の場合です。

また、2021年の総務省「家計調査年報(家計収支編)」によれば、高齢夫婦世帯の社会保障給付額は21万4530円です。高齢夫婦世帯とは夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦1組のみの世帯を指します。

退職金などの一時金や、会社員時代に貯めた私的年金も収入源となります。

定年後も再就職などで働くことを続ける場合は、現役時代の収入の7〜8割程度を想定しておきます。

あとは貯金です。60代の貯蓄平均額は2427万円です。しかし、この数字は高額保有者の値が大きく影響するので、一般的な世帯の実態に近い中央値を見なくてはなりません。

すると、「810万円」だとわかります(「家計の金融行動に関する世論調査2021」より)。

ただし、死亡するまでの定期的な収入という点では、年金以外は確実なものとは言えません。

老後に必要な生活費は月額28万円ほど

次に支出を見てみましょう。

老後の生活にかかる費用は、実際こうならない人もいますが、現役時代の2割減とよく言われています。現役時代の生活費が35万円だったとすると、老後の生活費は28万円前後を目安に考えていきます。大ざっぱな計算ではありますが、これまでかかっていた子どもの教育費は除外できるなどの変化もあると思います。

この他に、万が一のときに必要となる介護費用や、家のリフォーム代などのために1000万円を上乗せしておきます。

家計調査によれば、高齢夫婦無職世帯の標準的な実支出の平均額は月額約26万円となっています(家計調査年報2021年度)。また、ゆとりある老後の生活のために必要な月額は37万9000円とされています(生命保険文化センター2022年度「生活保障に関する調査」より)。