暑い日が続いている。汗をかいた背中にスプレータイプの制汗剤をシューッっと吹きかけてはいないだろうか。臭気判定士の資格を持つ石田翔太さんは「制汗剤は体臭の発生を抑えるもので、すでに発生してしまった体臭に対しては効果を見込めない。汗臭くなった肌に香りの強い制汗剤を使うことは、意味がないうえに臭い混じりのリスクもある」という――。
タオルで汗をぬぐう女性
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです

汗と臭いのメカニズム

日本人の「体から発せられるにおい」いわゆる体臭に対する関心は世界的に見ても高いと言われています。自分ではわかりづらいけれど、他人に「今、自分…….臭くないかな?」と聞くことはなんとなく恥ずかしいもの。そのため、普段の会話で体臭の話題が出ることは決して多くありませんが、実は日本人男性の7割、女性では9割もの人が何らかの汗対策を講じているという調査結果(インテージ調べ)からも、その関心の高さがうかがえます。

【図表1】行っている汗・ニオイ対策(上位15位)
図表=インテージ調べ「制汗剤市場に変化 汗とニオイ対策調査2019」より

夏場に気になる「汗のツンとした酸っぱい臭い(汗臭)」は、汗・皮脂・角質といったにおいの材料が、皮膚常在菌(微生物)に分解されることで発生します。そのため、もし仮に汗を全くかかない、あるいは皮膚常在菌が一切存在しなければ、汗臭を気にする必要はないというわけです。さらに皮膚常在菌は、汗の水分により皮膚上が高温多湿になった際に活性化します。

この汗臭発生のメカニズムに基づくと、汗は「①においの材料であること」「②水分で皮膚常在菌を活性化させること」の2つの要因をもって、汗臭の発生に寄与することがわかります。

主な原因は汗が皮膚常在菌を活性化させること

ただ、汗の99%はただの水。つまり汗そのものはほぼ無臭です。もちろん汗を舐めるとしょっぱく感じることからわかるように、塩化ナトリウム、カリウム、カルシウムといった電解質や、それよりも微量のアミノ酸、乳酸、アンモニアなど、水以外の物質も汗には含まれますが、それらの占める比率はたかだか1%未満。

アンモニアは単体で臭気を有しますし、アミノ酸や乳酸は皮膚常在菌に分解されると不快な臭いに変化します。しかし、繰り返しになりますが、汗に占めるそれらの含有率は1%未満と微量なため、汗が汗臭の発生に寄与する2つの要因のうち、「①においの材料であること」の寄与度はそれほど高くないと考えられます。

つまり、汗をかくと汗臭くなることの主な原因は、汗の「②水分で(においを生み出す)皮膚常在菌を活性化させること」という側面に求めることができるのです。