怒りを我慢するほうが早死にしやすい

怒りの感情は、相手を傷つけやすく、自分にもストレスとなるため、「コントロールしたほうがよい」とよくいわれます。そう思って、怒りをため込んでしまう人がいますが、これは健康上、大変よくありません。

こんな研究があります。192組の夫婦を対象に、17年間にわたって行ったミシガン大学の研究チームの結果です。この研究では、対象の夫婦を「不当に攻撃されたと感じた際、お互いに怒りをあらわにするグループ」「お互いが怒りを我慢するグループ」「妻だけが我慢するグループ」「夫だけが我慢するグループ」の4つに分類しました。結果、怒りを我慢した人たちは、怒りをあらわにした人たちよりも、早く死亡する確率が2倍にもなったのです。

つまり、健康長寿においては、怒ったもの勝ちで、我慢するほうがバカを見る、ということになってしまうのです。

怒りは抑え込めば抑え込むほど、心の中に悶々もんもんとため込まれます。すると、ふとした拍子にカッとなり、怒りが爆発しやすくなります。とくに、高年者にこの傾向が見られます。前頭葉の老化により、感情のブレーキが利きにくいからです。

「暴走老人」はつねに怒っているわけではない

よく、役所やお店のスタッフの対応に腹を立てて、大声で怒鳴りつけている高年者がいますね。高年者が衝動的に人を殴って逮捕されるニュースも増えてきました。いわゆる「暴走老人」と呼ばれる人たちです。ああいう人たちを見ていると、さぞ怒りっぽく、普段から怒りまくっているのだろうと思うことでしょう。

テーブルにぶつかる男の拳のイメージ
写真=iStock.com/liebre
※写真はイメージです

けれども彼らは、おそらく、普段はわりといい人で、あまり怒らない人たちです。ところが、日頃から小さな怒りを頑張って抑えているために、いったん爆発すると我を忘れ、相手を傷つけるほど攻撃的になっている可能性が高い、と考えられます。あんなふうになりたくない。そう思うなら、普段からいいたいことは言葉にして伝え、怒りたいときにも怒りの内容を言葉で表現していったほうがよいのです。私も、怒りは我慢しないことにしています。

「いわずとも察しろ」というのは単なる甘えただし、我慢したほうがよい怒りもあります。

たとえば、夫が仕事で嫌なことがあり、帰宅すると、妻が笑いながらテレビ番組を見ていたとします。イライラした夫は、「いつまでくだらないテレビを見ているんだ!」と怒る……。これは、我慢したほうがよい怒りですし、防げる怒りです。その裏には、先述した「かくあるべし思考」があります。