同社の本社に勤務する30代の女性社員に話を聞いた。彼女は英語に関しては苦手の部類である。社内公用語化に対する社員の賛否は半々だという。
「部内に限らず社内には外国人がほんの数人しかいないのにどうして英語でやっているのだろうと皆言っています。それでも会社がやれと言うから、やるしかないという雰囲気。確かに若い人の中にはよい機会だからとポジティブに勉強している人も多いですが、35歳以上の人は、なんで英語をと文句を言いながらも必死です。社内のコミュニケーションが英語で行われる以上、英語ができなければ出世にも給料にも響きますし、実務も滞りますからね。実際、この半年で落ちている営業の数字は英語化の影響、という社内のもっぱらの噂です。実務への影響はすでに出ているわけです。もっとも上層部は多少の売上減もやむをえない、と思っているようですけどね。家庭を持っている中堅社員は、仕事も忙しいうえに、終わると英会話学校にも行かなくてはいけない。見ていてかわいそうになります」
彼女自身の意見を訊ねると「ばかばかしいと思う」と否定的だ。
「強制的というのが嫌だし、好きな人がやればいいじゃないかと思う。考え方や生活スタイル、プライベートの時間の使い方は皆異なる。にもかかわらず今はその時間まで費やして皆が一斉に英語を勉強せざるをえないというのはおかしい。皆英語ができないと会社にいられなくなるから必死にやっているんです」
日産には英語化のルールや規定はない
ただ彼女は、最終的に12年には楽天の英語公用語化は達成されるだろう、とも言う。(※雑誌掲載当時)
「経営会議に英語で参加している、それほど英語が達者でなかった幹部社員のここ半年の上達には目を見張るものがある。私も含めて一般社員も半年間で英語力はかなりアップした実感があります。まあ会社のおかげというよりは、必死でやっている個々の努力の結果ですけどね」
会社の姿勢とは一転して悲壮感が漂うが、全員が英語を習得する意味を主体的に感じているわけではなく、不満を抱いている社員もいる。当然だろう。1990年代初頭、三菱商事の槙原稔社長(当時)が英語の社内公用語化をぶちあげたことがある。