どんなに仕事の能力があっても英語力がなければ昇進できないのだ。11年度入社予定の社員についても最低でも600~650点レベルの英語力を求め、中途採用の要件も最低600点に設定し、管理職クラスでの採用には社内の昇格要件を適用している。

英語包囲網が狭まるにしたがい社員も英語習得に必死にならざるをえない。会社が大手英会話スクールと提携した英語講座は即座に満杯となった。本社のある品川周辺の英会話学校に通っている楽天社員も多い。

葛城プロジェクトリーダーも「今までは終業後に飲みに行く人が多かったが、今は英会話スクールに通ったり、自宅で勉強している人がすごく増えていると聞いている」と語る。

楽天の中堅社員は英語習得に必死

全社を挙げた英語公用語化推進の熱意は相当なものだ。しかし日本人同士での会議の英語化など全社員の完全英語化をそこまで推進する必要があるのだろうか。

現時点では海外売上比率は少なく、将来的にも国内市場がなくなるわけではない。全員が海外に赴任するわけでもなく、日本で一生を終える社員もいるはずだ。

葛城プロジェクトリーダーも「全員が必ず海外業務に従事するわけではないだろう」と認める。しかし、たとえ日本勤務であっても英語力は必要だと強調する。

「英語公用語化の副次的効果としてコミュニケーションの効率化と世界規模のアイデア、ノウハウの共有が可能になる。たとえば鹿児島に勤務している社員の企画が成功した場合、同じ企画をフランスでもやりたいということも起こりうる。英語が共通語であればインターネットを通じて直接担当者同士でノウハウを共有できるし、意思決定も迅速になる」

確かにいずれはそういう事態も想定されるかもしれない。しかし、現実の必要性が低い現在、社員を英語化に駆り立てるには相当のエネルギーを要する。社員が英語化に共鳴し、やる意味を感じていれば問題ないが、そうでなければやらされ感と負担感が強くなり、仕事への意欲すら失う可能性もある。社員はどのように感じているのだろうか。