5月3日、太宰府高校(福岡県)の野球部員が練習試合中に相手の打球を胸に受け死亡した。スポーツライターの広尾晃さんは「いまの高校野球はケガや事故が起きやすい状態になっており、危険なスポーツといえる。高校球児の命と健康を守るためにも、高野連はすぐに対策を取るべきだ」という――。
阪神甲子園球場
阪神甲子園球場(写真=Kirakirameister/CC-BY-SA-3.0,2.5,2.0,1.0/Wikimedia Commons

なぜ福岡の高校球児は練習中に死亡したのか

5月3日、福岡県立太宰府高校(福岡県太宰府市)の野球部員が、久留米市で行われた他校との練習試合中に打球を受けて死亡するという痛ましい事故が起こった。

西部読売新聞朝刊(5月17日)によると、死亡した生徒は投手で、ピッチャーライナーを胸部に受けて倒れ、病院に搬送されたが助からなかったという。

対戦相手や細かい状況など事故の詳細は明らかにされていないが、筆者はいまの高校野球界において、命や健康に対する問題意識が薄れている象徴的な事故ではないかと思っている。

ケガとのリスクとの戦い

「硬式野球」というスポーツに使用する硬球は、コルク材などを芯にして木綿糸を固く巻いて作る。中空ではなく、中までぎっしりと中身が詰まり石のように硬い。重さ約140gの球が時速100キロ以上のスピードで常時飛び交うのだ。どんなに注意をしても死亡事故を根絶するのは厳しい。ただ、それを限りなく小さくしてきたのが野球の歴史といえる。

1920年8月16日、メジャーリーグのインディアンスのレギュラー内野手だったレイ・チャップマンはヤンキースのエース、カール・メイズの球を頭部に受けて死亡している。当時、メジャーでは打者は布製のベースボールキャップを着用していたが、この事故が契機となってヘルメット着用が推進されるようになった。

日本野球では、1939年8月19日、伝説の大投手・沢村栄治の球も受けた名捕手・久慈次郎が、打席に立った際に捕手の二塁への牽制球がこめかみに当たって昏倒。病院に運ばれるも2日後に死亡した。この事故を経て、日本野球でもヘルメットを着用するようになった。