高校野球にはどんな問題があるのか。作家の小林信也さんは「本来、高校野球は高校生のものなのに、大人の都合で動いている。そんな歪な構造が100年以上続いていることに誰も疑問を持たない」という。スポーツ文化評論家の玉木正之さんとの対談を収録した『真夏の甲子園はいらない』(岩波ブックレット)から一部を紹介する――。(第1回)
なぜ甲子園は真夏の開催に固執するのか
【玉木】私はスポーツライターとしての活動を開始して以来40年以上、高校野球を批判し続けてきました。それは高校生の単なる部活動をプロスポーツのように扱うのは間違いだと思ったからでした。もちろん現在も、その考えは変わりません。が、そこへ小林さんが私の「批判」よりも過激な「甲子園大会廃止論」を言い出された。その真意は……?
【小林】直接的には夏の暑さです。真夏の炎天下で野球をやるのは、やはり誰がどう考えてもおかしいでしょう。NHKの画面に「熱中症危険。屋外での運動はやめましょう」との文字が流れるなか、高校野球だけが例外なんですか?
2019年の夏、コロナ禍の起こる前年に甲子園球場で猛暑対策を取材しました。日本高野連の方に案内していただいて、球場の舞台裏、ベンチの後ろやベンチの中、スタンドなど詳しく拝見しました。
専任のトレーナーが試合の前後に選手たちにストレッチを徹底させているとか、水を凍らせたペットボトルをたくさん用意しているとか、それも凹凸のないペットボトルをわざわざ調達してとか、扇風機、エアコンをベンチや通路に何台も備えたとか、観客の通路にもミストの発生装置を据え付けた……、涙ぐましい暑さ対策をいろいろと見せてもらいました。その結果、とにかく何が何でも真夏の甲子園で大会を開催したいことがよくわかりました。
【玉木】そこまで真夏の開催に固執するのは、なぜでしょう?
【小林】甲子園球場を無料で借りられる時期で、高校生に学校を休ませずにできる夏休みに、と理由はいろいろあるようですが……。
【玉木】その一方で地方大会(甲子園大会への予選)では、多くの高校が一学期の期末テストの時期にぶつかっています。それに秋の国体の出場校の生徒には、学校を休ませています。