もはや社会現象化となった「名探偵コナン」
「名探偵コナン」という名前を聞いたことがない人は、もはやほとんどいないでしょう。1994年から週刊少年サンデーに連載され始めた青山剛昌さんによる漫画で、すでに100巻を超えています。コミック累計発行部数は、2023年2月時点で2億7000万部を突破していて、執筆時点では日本国内の漫画で第4位に当たる発行部数とのこと。とんでもない売れ行きです。
もちろん、本作はアニメ化されています(1996年から現在に至るまで)。パンデミックによる一度の延期を除いて、1997年以来ほぼ毎年アニメ映画が制作されており、2023年春に公開された『名探偵コナン 黒鉄の魚影』は、26作目に当たります(ちなみに、『黒鉄の魚影』の監督は、話題の劇場アニメ『Blue Giant』の立川譲さんです)。
『黒鉄の魚影』の興行収入は、執筆時点で125億円を超え、観客動員数は886万人を記録する人気ぶりだといえば、ファンでない人は驚くでしょうか。映画公開から40日ほどで、日本の歴代興行収入ランキングで31位になりました。
30年続く長寿コンテンツであることから察せられるように、この人気ぶりは一過性ではありません。USJにはコナンのアトラクションがあるし、コラボカフェやグッズ展開、ゲームや他作品とのコラボも枚挙にいとまがなく、その勢いはとどまるところを知りません。爆発的な人気があると同時に、日常のワンシーンに溶け込むような作品、例えば「ドラえもん」くらいの位置に「コナン」は座っているのです。
哲学者がファンでない人向けに語る「コナン」の面白さ
でも、この記事では、コナンの人気ぶりを掘り下げるつもりはありません。それなら、こんなふうに、コナンの基本事項を振り返ることになるのでしょうか。
小学1年生として生きる江戸川コナンは高校生探偵の工藤新一であるとか、怪しげな男たち(黒ずくめの組織)に妙な薬を飲まされて身体が縮んだとか、組織にばれないように小学生を続けているとか、そういう基本的な情報のことです。
でも、これくらいのことなら、ウィキペディアで済ませた方が便利でしょう。そんなことを記事で語り直しても仕方がありません。
私は京都市在住の哲学者です。1990年に生まれ、物心ついた頃からコナンに接してきました。今ではアニメやドラマを毎期膨大に観るし、毎年800冊前後漫画を読んで暮らしています。
そういうポップカルチャー好き研究者の視点から、非コナンファン向けにコナンの面白さを解説するというのが、この記事の趣旨です。ちなみに、上記の「黒ずくめの組織」がコナンのメインストーリーなのですが、そのネタバレはありません。