NHKがプロパガンダを打ち出したワケ

こうして放送サービスを無料で提供する放送局が多く出てくると、受信料徴収をやめようとしないNHKは、なぜ自分たちだけが、広告を流さず、受信料を取るのか説明しなければならなくなった。

そこで「自分たちは特殊であり、その組織を維持するために、放送法によって契約を義務付けられた国民から負担金を取ることができる」という冒頭のプロパガンダを打ち出してくる。

これがプロパガンダだというのは、よく考えれば不条理なことに気が付くが、何度も繰り返されると、マヒして当たり前に思ってしまうからだ。

あまねく全国に放送するから「特殊」だった

ただし、放送法第15条にあるように、「あまねく全国に放送する」がゆえに、民間放送とは違って、「特殊」だというのは本当だった。

民間放送は、東京のキー局と、経営上は独立の地方局がネットワーク契約を結ぶことで全国放送しているが、NHKは全都道府県に直営局があり、自前の放送ネットワークで全国放送している。東京、名古屋、大阪の基幹局と地方局は自前の電波リレー網で結ばれており、この電波リレー網の建設と維持に巨額の資金が必要とされた。そのための財源が受信料だったのだ。1964年の「臨時放送関係法制調査会」の答申はこの事情を踏まえたものだった。

2017年12月6日に最高裁判所大法廷がNHK受信料の徴収が合憲であると判断した理由も、NHKが放送法で「あまねく全国」に放送することを義務付けられているがゆえに、受信料を公平負担することで支えなければならないというものだった。(詳しくはデイリー新潮〈NHKの受信料には法的根拠がない? 判決の根拠を突き崩す事態が続出〉に譲る)

問題は、今でもそうなのか、ということだ。なるほど、全国津々浦々まで電波リレー網を張り巡らさなければ、離島や山間部まで放送を受信できなかった時代はそうだろう。だが、現在はインターネットで同じことができる。インターネットの通信回線は電話会社のもので、NHKはその建設費も維持費も負担する必要はない。もはや、国民に「特殊な負担金」の支払いを求める理由はない。

日本列島の地図の上にニュースとロゴの入った、インタビュー用のマイク
写真=iStock.com/AlexLMX
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