表題作が書かれた昭和9年は、日本各地が風水害など数多くの天災に見舞われた年。その後80年近くが経過したが、提示された問題点は未解決のままだ。著者によれば、災害が重なる「悪い年回り」は確率的に必ず巡ってくる。そのため「良い年回り」のうちに十分な備えが必要だ。しかし多くの人はそのことを忘れてしまうので、国家の指導層はその「健忘症に対する診療」を怠ってはならないと戒める。
根底にあるのは、天災被害を拡大するのは人間の無策であるという考えだ。東日本大震災直後の政府の対応ぶりは、著者にいわせれば落第だろう。だが、遅すぎるということはない。政治家や行政の責任者にぜひ読んでほしい一冊だ。