防衛力だけでは「脅威」に対抗できない

幸いなことに日本政府もようやくインテリジェンス重視を明確に打ち出した。

2022年12月、岸田文雄政権は、国家安全保障戦略など「安保三文書」と、5年間で43兆円の防衛関係費を閣議決定し、防衛力の抜本強化に乗り出した。このとき、マスコミは、防衛力強化と43兆円の防衛費にばかり注目したが、アメリカに並ぶ経済力をもつ中国、そしてロシア、北朝鮮の「脅威」に直面している日本が、自国の防衛力強化だけで対応するのは難しい。

では、どうするか。今回の国家安全保障戦略の特徴は、防衛力強化以外の方策も明確に打ち出していることだ。日本を守る力は防衛力だけでない。次の五つだと同戦略は指摘している。

日本地図
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日本を守る力の一つが「情報力」

第一に外交力。ロシアによるウクライナ侵略でも明らかなように、友好国、同志国をどれだけ持っているかが戦争の動向を左右する。よって日本も、「大幅に強化される外交の実施体制の下、今後も、多くの国と信頼関係を築き、我が国の立場への理解と支持を集める外交活動」を展開している。

第二に防衛力。それも防衛力に裏打ちされてこそ外交力は高まるとして「抜本的に強化される防衛力は、わが国に望ましい安全保障環境を能動的に創出するための外交の地歩を固めるものとなる」として、外交と防衛の連動を強めてきた。

江崎道朗『ルーズヴェルト政権の米国を蝕んだソ連のスパイ工作』(扶桑社)
江崎道朗『ルーズヴェルト政権の米国を蝕んだソ連のスパイ工作』(扶桑社)

第三に経済力。「経済力は、平和で安定した安全保障環境を実現するための政策の土台となる」。経済力があってこそ軍事力も強化できる。

第四に技術力。この「官民の高い技術力を、従来の考え方にとらわれず、安全保障分野に積極的に活用していく」。科学技術の軍事利用に反対する一部勢力には屈しない、ということだ。

第五に情報力。「急速かつ複雑に変化する安全保障環境において、政府が的確な意思決定を行うには、質が高く時宜に適った情報収集・分析が不可欠である」。

この五つの力を使って2012年からの第二次安倍晋三政権以来、日本は必死に米国以外の国とも防衛協力関係を強化してきた。その結果、いまや以下の国・組織が、日本の「味方」になりつつある。