3月に開業した北海道日本ハムファイターズの本拠地「エスコンフィールド」は、球場内にホテルや温浴施設、ビールの醸造所などを構える異色の球場だ。なぜ野球以外の遊び場をふんだんに盛り込んだのか。運営会社とデザインを担当した乃村工藝社に、日経トレンディ元編集長の能勢剛さんが聞いた――。

※本稿は、能勢剛『「しあわせな空間」をつくろう。 乃村工藝社の一所懸命な人たち』(日経BPコンサルティング)の一部を再編集したものです。

3月に開業した北海道日本ハムファイターズの本拠地「エスコンフィールド」
撮影=永禮賢
3月に開業した北海道日本ハムファイターズの本拠地「エスコンフィールド」

ホテルの客室、半露天テラス、屋上レストランからも…

2023年3月に誕生した北海道ボールパークFビレッジ(以下、Fビレッジ)。その中心施設であり、北海道日本ハムファイターズの新球場となるES CON FIELD HOKKAIDO(エスコンフィールドHOKKAIDO。以下、エスコンフィールド)に足を踏み入れると、そこには日本の球場とは思えない自由でダイナミックな空間が広がっている。

まず目に入るのは、外野スタンド奥の高さ70メートルもある巨大なガラス壁。屋根が閉じた状態でも、自然光で場内は明るい。切妻型の大屋根が開くと、太陽の光がふんだんに降り注ぎ、天然芝のグリーンが鮮やかに輝く。観客スタンドには、劇場を思わせるようなゆるやかな傾斜が付けられ、座席も通路もたっぷりとした広さ。場内のさまざまな場所に、特別な観戦デッキが設けられている。

VIPルームのバルコニーで仲間と食事しながら、ダグアウト並びのシートでフィールドの土に触れられるほどの近さから、フィールドを一望するホテルの客室バルコニーから、温浴施設の半露天テラス席から水着姿で、球場内ブルワリーの屋上レストランで出来立てクラフトビールを飲みながら……。これまでの日本の球場では考えられなかったような、自由で開放的な観戦スタイルがたくさん用意されている。

目指すは「新しい文化を生み出す場所」

そして、一塁側、三塁側の頭上には幅86メートルの巨大なビジョン。試合の経過や選手のデータ、試合を盛り上げる映像などが、次々に映し出される。場内は、広々とした通路を歩いて一周でき、数多くの有名飲食店が集まる横丁エリアやショップなどを通路に沿って配置。野球ファンはもちろん、そうでない人々にとっても、気分が上がり、特別な時間を過ごせる空間になっている。まさに、米国・大リーグのボールパークのような、エンターテイメント空間がそこにある。

エスコンフィールドを中心に、Fビレッジの敷地は約32ヘクタールもの広さ。パートナー企業とともに、球場の周りにはいくつもの施設が配置されている。球団の歴史を伝えるレジェンドスクエア、誰でも自由に遊べるミニフィールド、屋内外の子どもの遊び場、庭園、グランピング施設、プライベートヴィラ、農業学習施設、認定こども園、等々。レジデンスエリアにはマンションが建設され、人々が暮らす街でもある。2027年度には、JR北海道が敷地横を走る千歳線に新駅の開業を計画している。

Fビレッジが目指すのは、北海道日本ハムファイターズの本拠地というだけではなく、地域の大人も子どもも、国籍や性別も関係なく多くの人々が集い、交流し、新しい文化を生み出す場所。地域、そして北海道全体を活性化していくようなコミュニティスペースなのである。

Fビレッジの運営会社であるファイターズ スポーツ&エンターテイメントの小川太郎さん(事業統轄本部 コーポレート&ファシリティ統括部 ファシリティクリエーション部部長)
撮影=永禮賢
Fビレッジの運営会社であるファイターズ スポーツ&エンターテイメントの小川太郎さん(事業統轄本部 コーポレート&ファシリティ統括部 ファシリティクリエーション部部長)