雑談がうまい人は何が違うのか。作家の百田尚樹さんは「質問から入ることが効果的だ。人間は、訊かれた質問に答えたい、知らなければそれを知りたいと思う生き物だ。この気持ちを上手に使うと、簡単に相手の興味を惹くことができる」という――。
※本稿は、百田尚樹『雑談力』(PHP文庫)の一部を再編集したものです。
質問から入る
人の興味を惹く方法の1つに、質問から入るという方法があります。
人間というものは何かを訊かれると、それに答えようとする性質があります。そしてその答えがわからなければ、知りたいという興味が湧きます。
ただし、普段全然関心のないものや、身近でないものはダメです。いつもは何気なく使っている言葉や、知っていると思っていることが、実は全然知らないものであったということに、小さなショックを受け、同時に関心が一気に高まるのです。
たとえば「惑星」という言葉は誰でも知っています。普通に使う言葉です。
天文の話題になった時、「ところで、惑星って、どうして惑星って名前が付けられているのか知ってる?」と訊かれれば、たいていの人が、「あれ?」と思います。
惑星の「惑」という字は「惑う」という意味です。これは「迷う」とか「ふらふらする」という意味です。なぜ、そんなおかしな字を使っているのでしょう。
古代人が「惑う星」と名付けた理由
古代の天文学は天動説です。これは地球を中心に宇宙が回転しているという考え方です。これによれば、太陽も月も1日に1回、地球の周りを回ります。そして宇宙空間の多くの星も、1日に1回転します。もちろん季節ごとに軌道はゆっくりずれていきます(実際に冬の星座と夏の星座が違うのは、地球が公転しているからです)。
ところが星の中にはそういう正確な回転をしないで、不思議な動きをするものがあります。それは金星であり、火星であり、水星です。これらの星は地球の周囲を円運動しません。なぜなら、水星も金星も地球と同じ惑星で、太陽の周囲を公転している星だからです。
つまり地球を中心にして、これらの星を観察すると、見かけの動きは地球の周囲を回転するという動きにならないのです。それらの星は前に進んだかと思うと、後ろへ行ったり、また右や左にふれたりもします。
それで古代の人たちは、これらの星を「惑う星」と考えたのです。つまり惑星という名前は天動説の名残なのです。天動説が否定されて何百年も経つのに、今もその概念の言葉が使われているというのは考えてみれば奇妙なことです。