「試金石」はそもそもどんな石なのか
また、日常使う言葉に、「試金石」という言葉があります。これはある人や団体が本当に価値があるのか、それともニセモノなのか、という試験的な意味合いの場合に使われる言葉です。スポーツの前哨戦などにも使われます。
ところが、「試金石って、もともとどういうものなのか知ってる?」と訊かれれば、多くの人はまず答えられません。はたしてそんなものが存在したのかどうかも知らない人が多いのではないでしょうか。
これは金がどこまで純度が高いかを調べる石のことなのです。かつては実際に使われていました。
金は24金が100パーセントの純金で、そこに銀を加えることによって、純度が落ちていきます。18金とか12金といわれるものです。
ところがこれはなかなか見た目ではわかりません。今なら正確に純度を調べる機械もありますが、昔はそういうわけにはいきません。かなり大きな塊かたまりなら、比重を調べて判定する方法もあります。
「自らを納得させたい」モチベーションをつくる
ちなみにこの比重を調べて判定する方法を編み出したのは、アルキメデスと言われています。彼は王様に、王冠が純金かどうかを調べてくれと言われ、同じ重さの物体を容器いっぱいに水を入れた中に沈めれば、比重の重いものほどあふれた水の量が少ないことに気付き、それで王冠の金の比重を調べて、純金でないことを証明したという話が残っています。
話が逸れましたが、試金石はもっと単純なものです。
この石は黒曜石でできています。そしてそこには24金や18金の金で引いた線が書いてあります。これは金を石にこすりつけてできた線です。この線を比較すると、輝きが微妙に違うのです。
それで、ある金がはたしてどれくらいの混ぜ物であるかを調べるのに、この試金石に金をこすりつけて線をつけ、試金石の線と比較して、同じ輝きを持つ線を見るのです。
もちろん、今はこんなやり方をする人は誰もいません。ですから世の中には「試金石」などというものもなくなりました。でも、面白いことにその名前だけは今も残っているのです。
人は「あれ? なんだろう」と思うと、それを「知りたい」、あるいは「自らを納得させたい」というモチベーションが生じます。あなたが誰かに話をする時、相手にそういう気持ちを起こさせれば、もうこっちのものです。相手はあなたの話を興味津々に聞くことでしょう。
その意味で、さりげない質問から入るというのも、話をするテクニックの1つです。