雑談ではなにを話せばいいのか。作家の百田尚樹さんは「失敗談が一番いい。ただし、失敗談を話す時には、変に言い訳をしたり、恨み言を言ったりするのは避けたほうがいい。失敗談はあくまで明るくなくてはいけない」という――。
※本稿は、百田尚樹『雑談力』(PHP文庫)の一部を再編集したものです。
他人の「自慢話」には心から笑えない
自分の失敗談やドジった話は、ある意味で最高の雑談ネタです。大勢が集まる中で、愉快な失敗談を話すと、皆大喜びします。人はいかに面白い話でも自慢話には心から楽しめませんが、失敗した話は素直に笑えます。
でも、恥ずかしい過去や失敗を他人に話すというのは、なかなか度胸のいるものです。だからこそ、それを笑いに変えて話すと、人は喜んで聞いてくれますし、またそういう話を堂々とするあなたに好意と敬意を抱いてくれるものなのです。
異性に派手にふられた話、就職の面接でやってしまった失敗、その他、日常でやらかした恥ずかしい行為など、なんでもいいのです。ただ、大事なのは、聞いている人が思わず、くすっと笑ってしまうおかしさがなくてはいけない、ということです。笑えない失敗話は逆に全然面白くありません。
ですから、失敗談といっても、本当の悲劇はダメです。いかに不思議な話でも、そういう話は楽しい雑談には向きません。
言い訳・恨み言は抜かして話す
また、失敗談を話す時には、変に言い訳をしたり、恨み言を言ったりするのは避けた方がいいでしょう。それを入れると愚痴になってしまい、明るい話になりません。失敗談はあくまで明るくなくてはいけません。
私は間抜けな人間なので、失敗話などは山のようにあります。思いつくままにいくつか書いてみましょう。
若い時、好きな女性に一晩かかってラブレターを書き、ポストに投函したあとに、封筒に入れたのは下書きだったことに気付いたことがあります。実はその下書きの裏に、彼女の似顔絵をいたずら書きしていたのですが、余計なことにそこにおっぱいまで描いていたのです。手紙を出した翌日に、机の上にラブレターの清書を見つけた時は、舌噛んで死のうかと思いました。
大人になってからも失敗は山のようにあります。ただ、私の失敗の多くは暴言、失言の類いで、これはこれで面白いのですが、明るい笑いにはなりません。