産休・育休中のリスキリングはなかなか難しい
もちろん「ちゃんと育児をしていたら、リスキリングに割く時間なんかないはず」ではないし、「子育てしながら学ぶ人は、子供に対して手を抜いている」というわけではありません。国が力を入れる以前から、産休・育休中に学び直しをしたり、資格を取得した女性・男性はいたし、今もいるでしょう。
でも、特に女性の場合は妊娠経過が順調で体調がよく、出産にも大きな問題がなく、産後は体が順調に回復し、産後うつにもならなくて……といった数々の条件をクリアできた場合に限られます。また女性でも男性でも、たまたま我が子の健康・発達に問題がなく、周囲のサポートが得られるといった状況があって初めてリスキリングが可能になるでしょう。それでも子育ては手間がかかりますから、この時期のリスキリングには本人の大変な努力が必要になります。
産休は、出産のために必要な休業制度です。育休は、育児に時間も手間もかかるからこその休業制度であって、単なる休暇ではありません。赤ちゃんは1日に何度も母乳や育児用ミルクを飲み、おむつ替えも必要で、よく泣きます。ずっといい子に寝ていてくれることは、きわめてまれです。
「育休」に「育業」という愛称がついた理由
2022年6月、東京都が育休に「育業」という愛称を設けました。育児休業は、育休という短縮の仕方だと「育児休暇」だと思われたり、「仕事を休む期間」と捉えられがちです。でも、本当の育休は「子どもを育てる期間」。小池都知事は「業」には「仕事」や「努力して成し遂げること」という意味があり、「育児という未来を担う子どもを育てる大切で尊い仕事」にぴったりだと説明していました。当事者や周囲の育休に対するマインドセットを変えようとしているんですね。
「育業」の呼称は、サイボウズ社長の青野慶久氏、ワーク・ライフバランス社長の小室淑恵氏、元衆議院議員の金子恵美氏らが選考委員となり、小池百合子都知事と共に公募の中から決めたとのことです。その選考委員会は9人のうち5人が女性で、男性ばかりの内閣よりも、東京都のほうが子育て支援についてリアルな提案ができそうな感じがします。
今回、岸田首相や内閣が批判を受けたのは、これまで自民党が「3世代同居」「3年抱っこし放題」「子連れ出勤」などの効果のない少子化対策を掲げてきたからでしょう。さらに、2月21日には木原官房副長官が、子ども予算は出生率が上がれば倍増すると話しました。少子化対策のために子ども予算を増やすという話ではなかったのでしょうか。22日には岸田首相が現在GDP2%の子ども予算を倍増すると述べた件を修正しています。「本当はやる気がないのを隠さない」という意味での異次元の少子化対策です。