毎年、保育事故で子供が亡くなるという痛ましいニュースが流れる。小児科医の森戸やすみさんは「睡眠中、食事中は特に事故のリスクが高い。保護者のみなさんにも、どんなリスクがあるのか、どうしたら防げるのかを知っておいてほしい」という――。
輪になって踊る子供と幼稚園教諭
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意外と多い保育施設などでの子供の事故

この春、保育所や認定こども園などに入り、最初は慣らし保育のために短時間だけ通っていたお子さんも、園で過ごす時間が長くなった頃ですね。まだ新しい環境に慣れなくて緊張して疲れたり、体調を崩したりするお子さんも多いかもしれません。ときには急に機嫌が悪くなったり、食欲がなくなったりすることもあるでしょう。特に保育施設にお子さんを初めて預ける場合は、保護者のみなさんも保育事故などが心配になるだろうと思います。

内閣府によると、2021年に全国の保育所や幼稚園、認定こども園で子供がケガをするなどの事故は2347件と過去最多だったそうです。そのうち子供が死亡したケースは5件で、睡眠中の窒息や送迎バス内の置き去りなどが原因でした。

保育事故は預け始め、低年齢、睡眠中、食事中に起こりやすいことがわかっています。特に命に関わるのが、窒息、SIDS(乳幼児突然死症候群)、置き去りや閉じ込め(熱中症)、プールなどの水の事故(溺水)でしょう。内閣府は、こうした事故を防ぐために「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」を提示しています。具体的には、どんな事故があるのか、一つずつ見ていきましょう。

最もリスクが高いのは午睡中の窒息

保育施設で最も事故が多いのは、睡眠中です。0歳児は、まだ自由に寝返りを打ったり、顔を上げたりできないことが多く、窒息による死亡が多いのです。窒息の防止について、ガイドラインには次のように書かれています。

○医学的な理由で医師からうつぶせ寝をすすめられている場合以外は、乳児の顔が見える仰向けに寝かせることが重要。何よりも、一人にしないこと、寝かせ方に配慮を行うこと、安全な睡眠環境を整えることは、窒息や誤飲、けがなどの事故を未然に防ぐことにつながる。

○やわらかい布団やぬいぐるみ等を使用しない。

○ヒモ、またはヒモ状のもの(例:よだれかけのヒモ、ふとんカバーの内側のヒモ、ベッドまわりのコード等)を置かない。

○口の中に異物がないか確認する。

○ミルクや食べたもの等の嘔吐おうと物がないか確認する。

○子どもの数、職員の数に合わせ、定期的に子どもの呼吸・体位、睡眠状態を点検すること等により、呼吸停止等の異常が発生した場合の早期発見、重大事故の予防のための工夫をする。

乳児のベッドは硬めのもので、顔の周りに余計なものを置かないこと、仰向け寝が基本です。うつぶせ寝にさせたり、頭に何かかけたりしてはいけません。