子供の入院時には、保護者の付き添いが求められがちだ。小児科医の森戸やすみさんは「保護者の多くは過酷な環境で、お子さんに付き添われています。こうした無理が行われているのは、制度に問題があるためです」という――。
赤ちゃんの聴診
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大人と違って子供に「付き添い」が必要な理由

昨年末、「付き添い入院」の過酷さがニュースになり、やっと少し報道されるようになったと思いました。私は以前から保護者の負担の大きい付き添い入院には問題があると思っていて、ツイッターやブログなどで発信したことがあったためです。

付き添い入院とは、乳幼児などの小さな子供が入院する際に保護者が同じ病室に泊まり込んでお世話をすることを指します。例えば、子供に心臓の病気などの先天性疾患があった場合、腎臓などの慢性的な病気で通院している場合、「今度、検査入院をしましょう」「予定入院をしましょう」と入院することがあります。定期的に何度か入退院や手術を繰り返す場合もあるでしょう。そのほか、特に持病がない子供でも、急に具合が悪くなって入院するということがあります。大人と違って、子供の場合は、むしろ急な入院のほうが多いでしょう。

それらの入院の際に、保護者は病院側から「付き添いはできますか?」と聞かれたり、「付き添いがないと入院できません」と言われたりすることがあるのです。大人の入院だと付き添いの必要はないのに、なぜ子供だと付き添いが必要になるのでしょうか。

乳幼児がたった1人で生活するのは難しい

乳幼児は自分が病院にいなくてはいけない理由がわかりませんし、点滴をされたり、触ってはいけない医療機器に囲まれたりしている理由もわかりません。当然、点滴やモニターなどの医療機器を触るだけでなく、手に取ろうとしたり、遊ぼうとしたり、急に立ち上がって病室から出ていこうとしたりします。それでは治療ができませんね。

そして幼ければ幼いほど、食事だって大人と同じように配膳するだけでは食べたり飲んだりしてくれません。こぼすこともあるでしょう。当然、内服薬も机に置いたら自分で飲んでくれるということはありません。

さらに急に不安になったり、痛みに耐えられなかったり、思うように動けないつらさから癇癪を起こしたり、寂しくなって泣いたりすることもあるでしょう。そもそも普段の生活においても、乳幼児を長時間1人でいさせることは難しいものです。

まして慣れない病院の部屋で、痛みや不安に耐えて1人で過ごすことは難しいでしょう。常に誰か大人が近くにいて治療が受けられるようにし、食事や薬をとらせたりし、気持ちを落ち着かせたりしなくてはいけませんね。しかし、現状では、病院側が行うのは不可能なため、付き添いが必要になるのです。