看護師の配置基準は子供でも大人でも同じ

どうして病院のスタッフが子供の介助や保育をすることは難しいのでしょうか。それは間違いなく人手が足りないからです。

看護師の配置基準は、大人でも子供でも同じ人数です。「日勤帯」と呼ばれる朝8時から夕方17時の時間帯では、看護師1人に対して患者7人。さらに16時から24時半の「準夜帯」、24時から翌朝8時半までの「深夜帯」では看護師の人数が減ります。そのため、看護師1人当たりの担当患者数は増えるのです。とても子供の介助や保育はできません。

では、看護師の人数を増やせばいいと思う方もいるかもしれません。しかし、病院に支払われる診療報酬は、健康保険制度で決まっています。その制度で加算が認められている小児入院医療管理料は、求められる要件が厳しいことから、多くの病院は看護体制を強化できません。病院によっては看護助手がいたり、病棟保育士がいたり、看護師を独自に増員したりしていますが、手厚くすればするほど病院の負担が増えます。小児医療は不採算、つまりもうかるどころか赤字になりやすいのはそういう理由なのです。

その結果、保護者に付き添いをお願いするか、病院として小児の入院を取らないか、そのどちらかになりがちです。ですから、目の前の小児科医や看護師、病院に苦情を言っても、残念ながら改善は期待できません。日本の医療制度の問題なのです。

病院のベッドに座るガウンを着た子供
写真=iStock.com/HRAUN
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子供の「付き添い入院」における過酷な生活

付き添い入院中の保護者は、どんな生活になるでしょうか。

病室には、医師が患者さんの診察に少なくとも1日1回以上、看護師が1日2〜3回検温や心拍数、呼吸数などを記録するためにきます。大人の患者さんだと自分で食事量や排泄の有無、量を記録できますが、子供の場合は保護者の仕事になります。個室でなければ、周囲に他の患者さんや付き添いの人、医療従事者がいたり、モニター音が鳴ったりして静かな環境ではありません。

そして一般的に、付き添いの人のための寝具は病室に常設されていません。そのため、子供の病床に一緒に寝たり、折りたたみ式などの簡易ベッドを病床の隣に置いたりして寝ます。簡易ベッドは硬くて狭いものがほとんどで、全身が痛くなるという声が多く聞かれます。また多くの場合、患者さんには育児用ミルク、1日3回の食事、年齢によってはおやつも出ますが、付き添いの人の食事は自分で用意しなくてはいけません。買いに出かける時間がなく、また冷蔵庫や冷凍庫なども不足しているため、院内のコンビニで購入したお弁当、レトルトやインスタント食品を食べることになる人が多いようです。

シャワー室などは使える時間が決まっていて、予約しないと使えない場合が多いでしょう。そもそも、シャワー室がない病院もあります。患者さんと付き添いの人が自由に使える洗濯機を設置した病院も少ないでしょう。保護者が病室を出てトイレや買い物などに行く場合は、看護師に伝えたり、誰かに一時的に子供をみてもらうように頼む必要があります。