新型コロナ禍でより悪化した付き添い環境

このような付き添い入院のつらさは、インターネット上で繰り返し話題になっています。ツイッターなどのSNSで「付き添い入院」で検索すれば、驚くほど大変な状況がよくわかるでしょう。「過酷すぎて精神的にも参ってしまった」「食事も睡眠もとれない」などという声がたくさんあります。付き添い入院の大変さ、過酷さは、私が研修医だった20年以上前から変わりません。

それどころか、コロナ禍で昔より悪化しているとさえいえるかもしれません。現在、コロナ禍の影響で、入院する患者さんは抗原検査やPCR検査で新型コロナウイルスを持っていないかどうかを検査されますが、付き添う保護者も同様です。そして今は院内感染予防のため、入院したら退院まで同じ保護者が付き添わなくてはならない、付き添いの保護者も退院まで外出できない場合があり、よりいっそう過酷な環境になっています。

新型コロナウイルスが蔓延する以前だったら、家族などの誰か大人が付き添っていればよく、入院から退院までお母さんとお父さん、おじいちゃんやおばあちゃんが交代で付き添うことが可能でした。日中はおばあちゃんやおじいちゃんにお願いして、夜は共働きのお母さんとお父さんが日替わりで付き添うご家庭もあったのです。1人でずっと付き添うのはとても大変ですね。仕事や生活にも影響が大きいでしょう。

本来なら親子の希望や状況に合わせるべき

入院はお子さんの一大事ですが、その保護者にかかる負担もとても大きいのが問題です。そして、今は共働き世帯の方が専業主婦世帯の2倍以上で、ひとり親家庭も多いのです。子供が入院するまでに看病や通院のために数日仕事を休んだのに、さらに1〜2週間ほどの付き添い入院のための休暇を快く認めてくれる職場は少ないでしょう。失職の原因になるかもしれません。通常、子供の入院には公的な制度があり費用がかかりませんが、付き添いの人のベッド代、食費、洗濯代などはかかります。

本来、子供の付き添いは、子供と両親の希望に沿ってできることが理想でしょう。病気の子供に付いていたい(付いていられる)保護者は一緒に入院し、それができない場合は看護師や病棟保育士、チャイルド・ライフ・スペシャリスト、ヘルパーなどが付くことで子供独自のニーズに合わせ、安全に入院できるようにするべきです。

同時に、付き添う保護者が、もっとよい環境で子供と一緒にいられるようにしないといけないと思います。食事をとる、トイレに行くあいだは誰かがみていてくれる、個室などで寝るスペースのある病室を増やすなど、人間らしい生活ができるようにするべきです。また、食事量の記録、排泄の記録、子供の清潔を保つといった、医療なのか育児なのか境界が不明瞭な部分も誰がやるべきことなのかを明確にしないといけません。

病院のベッドでパルスオキシメーターを着けている子供
写真=iStock.com/Wavebreakmedia
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