病院や診療所で「叱られる」のはなぜか
「もっと早く受診しないと」「こんなの受診する必要ないよ」「そんなことも知らないの」「もっときちんとしてくれないと」などと医師に叱られてから、病院嫌いになってしまったという声を聞くことがあります。医師だけでなく看護師、保健師、助産師など、他の医療者に叱られたという例も少なくありません。
とくに病院やクリニックにかかるときは、ご自身またはお子さんの調子が悪いことが多いもの。体調の悪い時に、子育てをしながら受診するのは大変です。また、お子さんの調子が悪いなら、不機嫌で手間がかかりますし、保護者としては心配なわけですから、そんな時に頑張って受診して「叱られる」のでは医療機関にかかりたくなくなりますね。だいたい相手が医師であれ看護師であれ、他の専門職であれ、対等な大人である保護者を「叱る」のはおかしいでしょう。
いろいろな保護者の方のお話を聞いていると、さまざまなパターンがあるようです。大まかに分類すると、医療従事者の勉強不足による場合、医療者が個人的な価値観を押し付けている場合、です。それ以外に、患者さん側にも問題があったり、行き違いが起こっている場合もあるようです。ひとつずつ考えていきたいと思います。
医療者が「勉強不足」なこともある
以前、子供にキウイを食べさせたら赤い発疹が出たため、クリニックを受診したところ、小児科医に「アレルギーが出るかもしれないのだから、もっと慎重に食べさせないと」と叱られたお父さんの話を聞いたことがあります。
まず、どんな食材も理論上はアレルギーの原因になり得ますから、予測しきれません。アレルギーの原因になりやすい食べ物は、食文化・食習慣、年代によって異なります。現在、日本でアレルギーの原因になりやすい食品は、卵、牛乳、小麦、魚卵、ピーナッツや果物、蕎麦など(※1)。両親やきょうだいがアナフィラキシーを起こしたことがあったら、慎重になったほうがいいのですが、そうでなければ通常通り食べさせます。日本においてキウイはアレルギーを起こしやすい食べ物ではないので(※2)、そのお父さんが責められるいわれはありませんね。医師の勉強不足です。
こういうケースでは「何を食べる時に慎重になったらいいんですか?」などと具体的に質問して、明確に答えられない医師にはかからないほうがいいでしょう。また子供は可能な限り幅広く多様な食材をとったほうがいいので、やみくもに食事制限を指示する医師がいたら別の小児科にも行ってみてください。
※1 日本アレルギー学会、厚生労働省「アレルギーポータル」
※2 『アレルギー』2007.56(1)「2.食物アレルギーの疫学(我が国と諸外国の比較)」