さまざまな国で出生率が持ち直すなか、日本の少子化は加速している。小児科医の森戸やすみさんは「子育て支援も乏しく、そのうえ親子に厳しい風潮がある国で子供が増えるわけがない」という――。
病院のベッドで眠る生まれたばかりの赤ちゃん
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少額クーポンで「産み控え」解消⁉︎

つい先月、日本政府は新型コロナウイルス流行の長期化や将来への不安からの「産み控え」を解消するため、0~2歳児がいる家庭に一定額のクーポンを支給する方針を固めたというニュースが流れました。多くの人たちの反応は、当然ながら冷ややかなもの。一時的に少額のクーポンをもらったところで、子育てへの長期的不安が払拭されるはずがなく、少子化対策にならないと考えたからでしょう。

そもそも、これまでも政府の少子化対策は、不十分かつ楽観的すぎました。1996年に前年の出生率が1.57となったことを受けて、保育所の量的拡大や低年齢児(0~2歳児)保育、延長保育等の多様な保育サービスの充実、地域子育て支援センターの整備などの対策がとられることになりましたが、現在でも保育園は充足していません。2000年頃から若い夫婦の間で、共働き世帯の方が専業主婦世帯よりも増える逆転現象が起こり、以降も夫婦ともに働く世帯が増え続けているためでしょう。

【図表1】出生数と合計特殊出生数の変遷
厚労省の「人口動態統計」を基に内閣府が作成

2002年からは「男性を含めた働き方の見直し」「地域における子育て支援」「社会保障における次世代支援」、「子どもの社会性の向上や自立の促進」という4つの柱に沿って少子化対策が行われていますが、特に効果は見られません。

「3年間抱っこし放題」という少子化対策

2007年には「少子化担当大臣」というポストもできました。ところが、2013年に当時の安倍政権が打ち出したのは「3年間抱っこし放題」といった育児休暇を拡充する方針でした。希望者が、3年間の育児休暇を取れるのはいいことです。しかし、さまざまな企業において実現できるのか、親たちがそれを望んでいるのかどうか、といったことは十分に検討されたとは思えません。内閣府が行ってきた少子化対策の流れからも、異質の方針に見えました。

日本では、まだまだ男性は育児休暇を取りづらく、女性は出産を機に退職すると復帰がとても難しいのが現実です。さまざまな税金が上がり、実質的賃金は上がるどころか下がっているのに、子供の教育費は年々高くなっています。また児童手当には所得制限が設けられました。その結果、何人もの子供を持ちたいと思っても、持てないという家庭がさらに増えたのではないでしょうか。

こうしたことを背景に、日本の少子化は政府の想定よりもずっと早く進行しています。第2次世界大戦が終わった後に第2次ベビーブームが起きましたが、その子供世代(1971〜1974年生まれ)が出産適齢期の時に第3次ベビーブームが起きず、ますます状況が悪くなっているのです。