政治の責任はあまりにも大きい

こうした根拠のない「昔は良かった論」や多様性を認めない「古い価値観」は、未だにしつこく残っています。実際、子育てや少子化に関する政治家の発言はひどいものがあまりにも多くて驚きます。「政治家 失言 子育て」で検索してみてください。私は最新版のまとめを見たので、ため息をついているところです。

例えば、2022年6月に自民党の井上義行氏は「同性愛とかいろんなことでどんどんかわいそうだと言って、じゃあ家族ができないで、家庭ができないで、子供たちは本当に、日本に本当に引き継いでいけるんですか」などと発言。先進国では同性婚が認められ、同性の両親の間で子供を持つこともめずらしくないのに比べて、日本はなんと前時代的なのでしょうか。

同年7月には自民党の桜田義孝氏は、少子化や未婚をめぐって「女性はもっと男の人に寛大に」とツイートしました。未婚化は女性が悪いのではなく、経済的な不安が大きいと考えられます。日本は婚外子はいろいろな面で不利なので、結婚をしないと子供を持つということが難しいし、やはり結婚以上に子育てには経済的な不安がネックになります。万が一離婚した際、女性が一人で育てることが多く、しかも養育費が払われないことも多く、結婚も出産も女性にとってリスクが高いのです。そういった現実を見ずに、的外れな発言を繰り返す政治家を見るのはつらいものです。

日本の国旗
写真=iStock.com/baona
※写真はイメージです

「伝統的子育て」も政治の産物?

じつは家父長制的な古い価値観を押し付けたり、「伝統的子育て」を推奨したりする団体にも政治家が関わっています。すでに解散した「一般財団法人親学推進協会」は「発達障害は伝統的子育てで予防できる」という勉強会を行い、後に訂正し謝罪しましたが、その親学を推進した「親学推進議員連盟」の会長は安倍元首相でしたし、事務局長は旧統一教会との関係を問題視されている下村博文氏でした。

また神社界を中心に構成される政治団体「神道政治連盟」は、「日本の伝統や文化を後世に正しく伝える」ことを目的とし、選択的夫婦別姓に反対しています。日本最大の保守団体である「日本会議」は、「親学」に基づく教育方針、「行き過ぎた権利偏重の教育の是正」「ジェンダーフリー教育横行の是正」を主張してきました。こういった団体では年配かつ保守派の男性政治家が中心となり、互いに関連しているのです。

さらに旧統一教会の影響もあるのでしょう。今、ニュースやワイドショーは旧統一教会の問題で持ち切りですが、まさにそれをテーマとした鈴木エイトさんの著書『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』を読みました。そこには統一教会は独自の政党を持つのではなく、政治家に取り入って生き残り、発展していく道を選んだことが書かれています。旧統一教会を含む宗教右派と呼ばれる団体は「子ども庁」ではなく「子ども家庭庁」になるよう、また「パートナーシップ条例」を阻止するよう働きかけたという指摘もあるので腑に落ちる思いがしました。この本の巻末に載っている旧統一教会と関わりが深い政治家一覧を見ると、失言・暴言を発した政治家の名前がたくさんありますから、次の選挙の前に見ておくといいでしょう。

※編集部註:『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』の内容について誤った記載がありましたので修正しました(11月12日12:05追記)