患者さんも共に信頼関係を築いてほしい

一方、当然ですが、病院や診療所で嫌な目に遭ったからといって、必ずしも医療者が悪いわけではありません。信頼関係は双方向性のものですから、意に沿わないことがあっても落ち着いて考えてみることが大切です。

たまに保護者の方から「忘れ物を家に取りに帰るので子供をみていてください」などと言われることがありますが、診療をしながらお子さんの面倒をみることはできないのでお断りしています。また院内において、治療において、なんらかの危険がある場合は注意することがあるかもしれません。

「予防接種や乳児健診のついでに、いろいろ相談したいし、検査や処方もしてもらいたい」というご希望を通せないこともあります。診察や検査の枠を取っていないと、他の患者さんをお待たせしてしまうからです。その月初めての受診なのに健康保険証を忘れた、期限切れの小児医療証しかない、定期接種の予診票を忘れた、母子手帳を持っていないなどの理由で、予防接種や診察を受けられないと言われた際も決まりなので仕方がないと思います。

そのほか保険診療ですから、適応外の検査や治療、投薬はできません。例えば「心配だから、RSウイルスやインフルエンザじゃないか検査してください」と言われても、疑いのない状態で検査はできないのです。しかも、そんなにやみくもに検査してはキリがありませんね。

家族のヘルスケア、医療、保険の概念
写真=iStock.com/Ridofranz
※写真はイメージです

新型コロナウイルス感染症の影響もある

このように医療者が一部の患者さんに不要な検査や無理な処方を頼まれたり、逆に必要な検査や処方を拒否されたり、理不尽な要求や批判を受けることもあります。もちろん程度によっては通報しますが、まれに暴力や暴言にさらされることも。それでも医師には「応召義務」があり、基本的に患者さんを選ぶことはできません。

特に現在は新型コロナウイルス感染症の影響が大きく、お子さんが陽性になると「公共の乗り物で帰ってはいけないって、どうやって帰ればいいんだ!」「濃厚接触者は最後の接触から5日間も必要最小限の外出しかできないなんて、仕事に行けないじゃないの!」と怒り出す方もいらっしゃいます。でも、周囲に感染を広げないためには仕方ないことなのです。

そして感染症は、かかった子供が一番つらいもの。体調が悪いにもかかわらず、保護者が怒っていたら、子供は「自分が悪いのかも」と一層つらくなるでしょう。そして誰かに怒りをぶつけたい気持ちはわかりますが、感染症にかかったのは目の前にいる医療者のせいではありません。わからないことがあったら、冷静に資料を見たり、質問したり、確認したりしましょう。

先に述べたように、治療には医療者だけでなく、患者さんや保護者の方も参加しないといけません。参加とは、指示を鵜呑うのみにすることではなく、説明を受けた上で共に協力し合うことです。いい治療を行うために、ぜひ医療者と信頼関係を築いていきましょう。

新型コロナウイルス感染症にかかった場合は、こちらをご覧ください!

厚生労働省「新型コロナウイルス感染症 陽性だった方へ ~自宅療養中に気をつけること~

【関連記事】
「精神科医が見ればすぐにわかる」"毒親"ぶりが表れる診察室での"ある様子"
「10万人の胃腸を診た専門医が警鐘」日本人の約5割が毎朝食べている胃腸に最悪の"ある食べ物"
「脳トレはほぼ無意味だった」認知症になっても進行がゆっくりな人が毎日していたこと
「1日2個、切ってスプーンで食べるだけ」メンタル不調に効く身近な"あの食べ物"
欧米では絶対にそんな治療はしない…現役医師が「日本の終末医療はほぼ虐待」と語るワケ