おかしな民間の資格ビジネスには要注意

一方、現状では出産・育児によって、キャリアを中断せざるを得ない女性は多く、また男性も育休を取った後に職場で冷遇されたり、退職に追い込まれたりという話をニュース番組やネットの記事で見かけます。育休取得者が不利にならないような法の整備も必要ですが、他方で自分と家族を守るために新たなスキルを身に付ける、資格を取るということも大事でしょう。

また、せっかく頑張ってリスキリングするなら、国家資格、語学など本当にスキルアップにつながるものを選ぶようにしてください。わざわざこのように書くのは、子育て中の人を狙うおかしな民間資格がたくさんあるからです。

例えば、次のようなものです。○○ソムリエ、○○マイスター、○○療法士、セラピスト、インストラクター、カウンセラー、アドバイザー、コーディネーター、鑑定士、デザイナー……。それはどこが認定しているか、その資格を取ると収入が上がるかどうか必ず確認してください。資格を認定する側だけがもうかる「資格ビジネス」というものがあるのです。そういった資格は、高いお金をかけて取っても、仕事にならず、さらに集客セミナーを受けさせられることもあります。「短時間で取れる」「通信講座を受講するだけ」「試験不要」といったキャッチコピーに惑わされないようにしましょう。

コワーキングスペースで学ぶ女性
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです

何歳でも育児中でも挑戦できる仕組みが必要

先日、NHKのクローズアップ現代では、沖縄県糸満市の成人女性を対象としたリスキリング制度を取り上げていました。非正規雇用で子供と過ごす時間が少なかった女性が、市が行うリスキリング講座を無料で受け、今ではシステムエンジニアとして活躍しているという話でした。他にもドイツで単純労働をずっと行ってきた男性が、リスキリングによって工作機械を扱う職に就くという事例も紹介されていました。

本当に将来につながるリスキリングとは、こういうことですね。収入やスキルが上がる資格を取るために学ぶ、そのために自治体などが行う無償の講座を受けるなど、低コストで実際に役に立つものを選ぶことが大事です。

一方、岸田首相や自民党、政治家のみなさんは、もっと子育て経験者や子育て中の人たちの意見を取り入れ、また受け入れる事業者側のことも知った上で有効な政策を実行していただきたいものです。「育業中でもこのようにしたらリスキリングできます」という情報をもらえたり、助成制度ができたりするといいですね。

もちろん、誰もがリスキリングをするべきとは思いませんし、希望者だけでいいと思います。また特に子育て中のリスキリングは、前述のように条件が整って初めて可能になることだからです。だからこそ、何歳からでもリスキリングできる仕組みづくり、また育児中でもリスキリングできるような環境づくりを、国や自治体が支援してくれたらと思います。

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