円やドルなどを売買する「FX」は、資産形成の役には立つのか。金融アナリストの土屋剛俊さんは「為替は上がるか下がるかしかない、だからFXも2分の1で勝てるように思えるが、それは違う。勝ちは少ないが負けは大きく、損するときはあっという間に賭け金をすってしまう。そして方向を合理的に当てることは不可能。それが典型例だろう」という――。

※本稿は、土屋剛俊『お金以前』(日経BP)の一部を再編集したものです。

株式チャートとサイコロ
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FXは為替の変動に賭けるゲーム

投資として、FXはどうか考えてみましょう。

ここまでFXは、読みにくい、最も難しい投資であると言ってきました。しかしFXは、その難しさに関係なく、投資の一形態として定着しています。

FXは為替の変動に賭けるゲームですが、投資対象としては不適切です。

これにはふたつの要因があります。

その1 レバレッジを掛けること
その2 その結果、短期の相場変動に賭ける投資になること

詳しく見ていきましょう。この1と2は密接に関係があります。

まず、レバレッジを掛けるとは、要するに「借金をして投資をする」ということです。

そもそもレバレッジとは「梃子てこ」という意味です。基本的に博打やギャンブルというのは自分のお金を賭けるものですが、手持ちのお金が少ししかないと、大きく儲けることはできません。レバレッジとは、大きく賭けるためにあります。

99.9%の確率ですべてのお金を失ってしまう

たとえば手持ちのお金が10円しかなく、勝ってもらったお金はすべて次の勝負の賭け金として使うという賭けをしたとしましょう。FXとは、この例のようなゲームです。

そして、ルーレットの赤黒に10回賭けるとしましょう。為替は上がるか下がるかの二択ですので、赤か黒かに賭けるルーレットに似ているところがあります。

奇跡的に10回すべて勝つとします。

勝ち1回目 10円×2=20円
勝ち2回目 20円×2=40円
勝ち3回目 40円×2=80円
勝ち4回目 80円×2=160円
勝ち10回目 5120円×2=1万240円

これだけ奇跡の連続が起こって、やっと1万240円の儲けです。

このFX風ルーレットでは、勝ったお金はすべて次の賭け金として使っていますので、途中で1回でも負けると自分のお金はゼロになります。

計算式は省きますが、この賭けは1024分の1023の確率で有り金がゼロになります。そして1024分の1の確率で1万240円になります。また、負けてすべてのお金を失う可能性は99.9%です。

こんなに確率の低い勝負をする人はほぼいないでしょう。いても99.9%の確率で負けです。

もし、1回だけの勝負なら勝てるかもしれないと思ったとします。それなら勝率は2分の1です。でも10円しか持ってないので、勝てても儲けはとても少ないです。

ここで、レバレッジを効かせるべく、お金を借りたらどうでしょうか?