やる側が有り金をなくしてもFX業者は儲かる

このように、FXには、お金を貸した方が取りっぱぐれないというしくみがあります。この構造を考えた人は、すごいビジネスセンスだと思います。

FX業者からするとお客さんが有り金を全部すっても、自分たちはちゃんと儲かるようなしくみです。反対に、やる方はあっという間に元手を全部なくしてしまいます。

ここでの例は計算を簡素化するために、レバレッジを100倍で計算しています。今は法律が改正され、レバレッジは元本の25倍くらいまでに制限されています。

でも、「FXはルーレットのように運でやってはいない。きちんと為替の未来を読んでの投資ではないのか」という意見もあると思います。ただ、FXには、長い期間で大きな経済の流れを予想して為替の勝負をするという余裕はありません。極めて短期的な為替変動で勝負するしかないものです。

為替というのは短期の相場変動を予想するのには極めて不向きです。為替の短期の変動は需給に大きく左右されますが、市場参加者が多すぎて、次の瞬間に「誰がいくらだけ売るのか、買うのか」は誰にもわかりません。そんなことを予想することは不可能と言ってもいいでしょう。

短期の動きを当て続けるのはプロでも不可能

また、為替には実需と投機があります。

実需というのは原油を輸入するためにドルを買わないといけないとか、自動車を売った対価としてドルが入ってきて、それを円に替えるというような、文字通り実際の需要があって行う取引です。

投機というのは、「今ドルを買うと値上がりしそうだから、値上がりしたら売って儲けよう」という目的で為替取引をする場合です。

この投機の比率は、実需のなんと10倍くらいです。FXの取引も投機に分類されます。

このようにいろいろな取引動機を持った売買が交錯するわけですから、いつ誰が売ったり買ったりするかわかりませんし、投機筋はちょっとしたニュースでコロコロ動く方向が変わります。

短期の動きともなると、この投機筋の動きのほかに、消費者物価指数(CPI)の数字やFRB議長の発言、政治家の発言、株価、商品価格、天候、地政学リスクなど、あらゆる要素で予想外の動きが多くなります。

したがって、短期の動きを当て続けるのはどんなプロでも不可能です。できたとしてもまぐれです。

また、理論的なアプローチも行いにくいのが為替の難しいところです。いわゆるファンダメンタルズ分析(注)というものですが、それすらうまくいかないことが多いです。

(注)ファンダメンタルズとは、国の経済状態などを表す指標のことで、「経済の基礎的条件」と訳されます。国や地域の場合、経済成長率、物価上昇率、財政収支などがこれに当たります。ファンダメンタルズをもとに為替などの値動きを予測することをファンダメンタルズ分析といいます。