「完結を旨とせよ」
帝人の大八木成男社長はずばりと指摘する。背景には「シンプルでないもの、要するに複雑な話や複雑な文章は、絶対に本質を突いていない」という認識がある。
ローソンの新浪剛史社長も「典型的なダメ文書は、とにかく長いこと」と切り捨てる。新浪社長によれば、長くて複雑な文章は「難しい経緯の中で自分がいかに奮闘しているか(中略)、いかに豊富な知識を持って事に当たっているか、理解してほしいというアピール」にすぎない。
企画書や稟議書の読み手である経営トップは、くだくだしい経緯の説明ではなく、結論から入る単刀直入な文書を求めている。文書を提出する側(部下)は、このような受け手側の考えを理解したうえで書くべきだ。では、シンプルに書くとはどういうことか。
大八木社長の流儀は「最初に『結論』が明示され、次に『課題』、最後に課題に対する『対策』という形で構成されている」というもの。よきビジネス文を書くための第1の条件は「シンプル」だ。
ただし形式だけ整えても、内容が伴っていなければ画餅と同じ。第2の条件は「ロジカル」であること。そのためには、背後に論理と実証の積み重ねが必要だ。大八木社長は「書き始める前の段階で、フレームワークを可能な限り拡大する作業が必要」という。具体的には、関連情報の収集と検討である。
ビジネス文は、文面に盛り込まれたことがすべてではない。発表資料ばかりか企画書や稟議書であっても、ときとして口頭でのプレゼンテーションが必要だ。書かれていないこと、たとえば「なぜほかのプランではいけないのか」の証明がいる。