茶道はゆっくりと流れる時間の中で、優雅なひとときをお楽しみいただきます。

亭主は余裕を持って準備することで丁寧なおもてなしをすることができますし、お客様もゆとりを持っていくことで細やかな心尽しに気がつき感謝の気持ちがわきます。

気持ちに余裕を持つことで、主・客共に思いやりの心で通じ合うことができるのです。

時間に余裕がなかったり、気持ちにゆとりがなかったりする時は、目の前のことや自分自身のことだけで手いっぱいになり、周りの人を思いやることができなくなります。

そうなると、イライラして対応が雑になったり、口調が強くなったりしてしまうかもしれません。

自分にも、周囲の人にもよいことは何もありません。

これでは、心のこもったおもてなしをするのは無理なことですよね。

ビジネスでは、お客様との約束で遅刻をしてしまうと、初めからつまずき、チャンスを失うかもしれません。

その後、信頼を回復するのは大変なことです。

江戸時代、相手の時間を奪う行為は「時泥棒」といわれ、弁済不能の十両の罪といわれたそうです。

お金は借りても返済できますが、時間は返すことができません。

アメリカでも「Time is money」(時は金なり)という言葉があります。世界中どこでも時間を大切にする気持ちは一緒です。

時間を大切にすることが信頼を結ぶ基本となります。

自分の中の時計を常に少し進めて設定することで、心に余裕が生まれ、周囲を思いやり、全てにおいてよいスタートをきることができると思います。

何かあっても心の中で、「大丈夫、大丈夫」

降らずとも傘の用意(不慮の事態に備える)

「雨が降らなくても傘を用意しましょう」という意味です。

現代はもしもの時のために折り畳み傘がありますが、利休の時代は突然、雨が降ると濡れるしかありませんでした。

傘を持たずにお茶会にいらしたお客様は帰りが心配になり、ゆっくり落ち着いてお茶を楽しむことができません。

そのような不測の事態に備え、お客様をお迎えする時には雨が降っていなくても傘を用意して、お客様に余計な心配をさせないようにしなさいという利休の教えです。

気配りを心がけるには、相手に余計な心配をさせないように不慮の事態への備えを常に意識する、相手のことを第一に考える、利他の精神です。

鞄に折りたたみ傘
写真=iStock.com/t_kimura
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