自分自身も安心でき自信を持って仕事をするために
炭は湯の沸くように置き(準備の大切さ)
「炭はお湯が沸くように置きましょう」という意味です。
現代はスイッチをひねればお湯が沸きますが、茶道では、お釜にたっぷりの水を注ぎ、炭を使ってお湯を沸かします。
美味しいお抹茶を点てるためにはお湯の温度が重要です。
お湯の温度が低ければ、うまく点てることができずに美味しいお抹茶ができません。
ですから、この炭の置き方がとても大切で、置き方によってはお湯が沸かないこともあります。
逆に適した湯加減になると、「松風」の音(お釜からシューという松林を風が吹き抜けるは音に例えた)が鳴ります。
この音は、五感を大切にしている茶道ではごちそうともいわれています。
このように、炭を置くことは事前準備で裏方での仕事ですが、ここを怠ると火がうまくおきずに美味しいお抹茶を点てることができないため、茶道の一番の要でもあります。
これは、事前の準備や段取りの重要性を表しています。
美味しいお抹茶を点てるためには、準備を怠ってはいけないということです。
これはお湯の準備だけに限らず、何事をするにも、事前の準備や要点を押さえた段取りをすることで成果がみえるということを表しています。
例えば、仕事の打合せでも準備が間に合わずに直前に慌てる人がいますが、このような人は取引先の前でも落ち着かずに、忘れものをしたり、大事なことが抜け落ちていたりして、相手の信頼を欠いてしまい、仕事もうまくいきません。
やはり事前準備をしっかりすることで、自分自身も安心でき自信を持って仕事ができますし、相手にも信頼を与え、仕事もうまくいくと思います。
本来ある自然体のシンプルな美しさを引き出す
花は野にあるように生け(自然体でいること)
「花は野に咲いているように生けなさい」という意味です。
ただし、ここでいう「野にあるように」というのは、野原に咲いているそのままの状態で入れなさいという意味ではありません。
大切なのは、無駄を取り除いた花で、野に咲く花を思わせるという、物事の本質を追求することです。
床の間に飾る茶花は、西洋の豪華なフラワーアレンジメントと違い、引き算の美学ともいわれています。
花を入れる時は余分な花や枝葉を切り落し、余計なものを徹底的に省くことで、本来ある自然体のシンプルな美しさを引き出すことができるのです。
亭主はその日のお茶会に想いを込めて、お花を入れます。
お茶席で唯一、命があるのがお花です。
花の個性や魅力をうまく引き出すことで、命の尊さを盛り込むことができるのです。
即ち、一輪の花には、命が凝縮されています。
花にも個性があり、命があるように、私たち一人ひとりにもそれぞれの個性があります。
人の目や周りの環境を意識して、見栄を張ったり、虚勢を張ったりすることもあるかもしれませんが、自然体でいることこそが一番美しい状態なのではないでしょうか。
過剰な装飾をそぎ落とすことで、魅力がさらに際立つと思います。
床の間に飾ってあったお花と再びめぐりあうことはないと思います。
人との出会いも、この瞬間はたった一度きりのものです。
だからこそ、この一瞬を大切に想い、自分本来のシンプルな姿でいたいと思います。