「AirTag(エアタグ)」の悪用が止まらない

アップルが忘れ物防止アイテムとして販売している「AirTag(エアタグ)」の悪用が相次いでいる。

本来AirTagは、鍵や財布、バッグなどに付けておき、不意の忘れ物に備える商品だ。500円玉ほどの大きさで、厚さは8㎜。AirTagの付いたアイテムを紛失してしまった場合、その位置をiPhoneやMacなどからほぼリアルタイムで確認し、現場まで取りに戻ることができる。

AirTagとiPhone
写真=iStock.com/hapabapa
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だが、小型かつ高精度であることを悪用し、ストーキングなど犯罪に利用する例が後を絶たない。意中の相手の持ち物にAirTagを忍ばせれば、相手のあずかり知らぬところで行き先を追跡できてしまう。

この過程で、善意の人物が所有するiPhoneなどのApple製品が、そうとは知らずストーカーに利用されていたおそれがある。AirTagはAppleの「探す」ネットワークを通じて位置情報を送信する。この「探す」ネットワークは、付近を通りかかったiPhoneの助けを借りて情報を送出するしくみだ。

Appleとしても発売当初から対策を講じているが、完全には機能していないのが実情だ。アメリカでは交際相手の行動把握に悪用し、最終的に殺人事件にまで発展した例が出ている。

浮気が発覚し、交際相手をひき殺す事件に

米ワシントン・ポスト紙は今年6月、中西部インディアナ州のパブで発生した事件を報じている。

記事によると、交際相手の男性の帰りが遅いことから浮気を疑った26歳女性が、男性の車の後部座席にAirTagを仕掛けたという。男性がパブへ立ち寄ったところ、後を追う形で女性が店に乗り込んだ。そして女性は、男性が別の女性と一緒にいるのを発見する。

目撃者の証言によると、女性は交際相手に同伴していた女性を指差し、「あの女を殴る」と宣言したという。空のビール瓶をつかんで同伴女性に殴りかかったが、男性がこれを阻止。そこから口論に発展した。

3人はバーから追い出され、女性が自身の車に戻ったことで事態は収拾したかに思われた。だが、目撃者が裁判で証言したところによると、女性は車を後ろ向きに急発進させ、男性と同伴女性に突っ込んだという。アメリカでは前進駐車が主流であり、駐車状態からバックで急発進したとみられる。