Appleは、「何億人ものAppleユーザーが、一緒に探してくれます」と利点を強調している。自分の手持ちのiPhoneが、知らないうちに他人の探し物に協力している心温まるしくみだ。

しかし、AirTagによるストーキングが相次いでいる現状、このしくみは必ずしも美談と言い切れなくなってきた。理論的には手持ちのiPhoneが、知らぬ間にストーキング行為に協力してしまっているおそれもあり得るという、なんとも居心地の悪い状況だ。

街中のみんなで「探す」ことへの恐怖

英の著名YouTuberトム・スコット氏は今年公開の動画のなかで、ある実験を行っている。人混みのロンドン市街において、友人のポケットに本人の了承を得たうえでAirTagを仕込み、友人に1時間逃げてもらい、捕まえられるかどうかを試した。

友人は携帯の通信機能をオフにしていたが、それでも街ゆく人々のiPhoneが彼のAirTagの信号を中継し、スコット氏のiPhoneに最新の位置を送り続けた。

中継のタイムラグに悩まされたスコット氏は、動画内で友人に追いつくことこそできなかった。だが、位置の精度に関してはかなり正確に取得可能だということが判明したようだ。

この動画は人々の関心を集め、現在までに320万回以上再生されている。「探す」ネットワークの頼もしさと同時に、悪用の怖さを浮き彫りにする結果となった。

これまでAppleは、米テック大手のGAFA4社のなかでもとりわけ、ユーザーのプライバシーを尊重する姿勢を打ち出し信頼を勝ち取ってきた。だが、位置情報を売りにしたAirTagではその製品の特性上、プライバシーの懸念が目立つ。

度重なるアップデートで対応は施しているものの、ユーザーとしては現状、警告音に耳を澄ますなどして自衛するほかない。

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